2017年09月06日
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麻酔が効かない時もあるの?

麻酔が効かない時もあるの?

歯科治療の痛みをマヒさせてくれる麻酔。治療のときには無くてはならない存在です。けれど、麻酔が効きづらいケースというのもあるようです。

骨が分厚い部位

歯科麻酔の定番と言えば、治療部位の神経近くに麻酔薬を注射する局所麻酔です。局所麻酔の方法にも色々とありますが、もっとも多く用いられるのは「浸潤(しんじゅん)麻酔」という方法です。

浸潤麻酔では、麻酔したい部位の神経近くの組織(歯肉や骨膜など)に麻酔薬を注入します。注入された麻酔薬はそこから組織内を浸みわたり、目的の神経に達します。麻酔の範囲を限定できる安全性の高い方法ですが、骨の分厚い下顎などでは麻酔薬が浸みわたりづらく、麻酔の効きが遅かったり、不十分だったりすることがあります。

この場合には、麻酔薬の量や種類を調整しますが、それでも難しいときには、治療の刺激を直接受ける末端の神経ではなく、脳に刺激が伝達されるまでの神経の道すじの方を麻酔する方法(伝達麻酔)で対処します。

伝達麻酔は、浸潤麻酔よりも幅広い範囲に麻酔を効かせることができますが、その分様々な方面への配慮が必要となるため、浸潤麻酔が適応しない場合に限って使われます。

麻酔部位に炎症がおきている

浸潤麻酔に使う麻酔薬は、その性質上、組織が酸性の状態に傾いていると上手く浸みわたることができません。通常の歯周組織はアルカリ性ですが、ひどい虫歯や歯周病で炎症をおこしていると酸性に傾くため、炎症の強い部位の神経には麻酔が効きづらくなります。

この場合には、麻酔薬の量を増やすか、伝達麻酔を使うかなどの方法で対処します。虫歯は進行するほど痛みが増しますが、そうなると炎症も強くなって麻酔は効きづらく、多くの麻酔が必要になるという悪循環におちいり、治療の負担が増えてしまいます。また、歯肉に炎症をおこす原因となるプラークをためることも麻酔の効きを左右します。

日頃から口内のお手入れを行い、歯科医院での定期メインテナンスを受けておけば、虫歯や歯周病の発見は早く、治療の負担も痛みもわずかで済みます。ごく初期の虫歯なら、麻酔をしないままでの処置が可能なときもありますので、早期発見や口内環境を整えるためのメインテナンスが重要なポイントです。

重い糖尿病などの全身疾患がある

麻酔薬が確実な効果を発揮するための条件としては、全身状態との関わりもあります。とくに、重度糖尿病の患者さんでは、組織が炎症をおこしやすい状態にあるため、局所麻酔の効きは悪く、別の麻酔法が検討されるケースが多いようです。

歯科以外の領域に痛みの原因がある

「痛み」の感覚を発しているのは脳ですが、そのきっかけとなる神経への刺激には、物理的・神経性・心因性の3つの種類があります。歯科の治療で発生する痛みは物理的な刺激によるもので、実際に組織に加わった針やメスの刺激に反応して痛みがおこり、歯科で行う局所麻酔は物理的な刺激に対して効力を発揮します。

一方、神経性の痛みは、神経そのものが何らかの障害を受けて生じているもので、物理的な刺激が無くても痛みがおこります。心因性の痛みは、神経自体には異常がないものの、不安や緊張によって脳の伝達物質に異常がおき、無いはずの痛みを強く感じてしまうものです。

このようなケースでは、物理的刺激に対する局所麻酔は十分に効いていたとしても、痛みが発生することがあります。その場合は、鎮静作用のあるガスを吸うことで痛みを緩和させる笑気麻酔法、静脈内に鎮静作用のある薬を入れる静脈内鎮静法の併用などが効果的です。それでも難しいときには、全身麻酔法が検討されることもあります。