2017年12月10日
一般歯科

虫歯を放っておくとどうなる?

虫歯を放っておくとどうなる?

虫歯の治療…行かなきゃいけないとは思っていても、忙しかったりすると、「まぁ、もう少し後でいいか…」と先延ばし、痛みの我慢が限界に達してからやっと重い腰を上げるなんてこともありますよね。

ですが、虫歯は「早期発見・早期治療」がダメージを最小限に食い止める最大のポイントになります。ごく初期のレベルの頃を除き、自然治癒はしないのが虫歯の特徴です。

虫歯を放っておくとどうなってしまうのでしょうか?

虫歯放置の結末は「歯が死んでしまう」こと

先に結論から言うと、虫歯を放っておくと歯の穴がどんどん大きくなり、エナメル質やセメント質からその奥の象牙質へ進んで歯の根っこの部分も侵され、最後は大切な神経や血管の通っている歯髄(しずい)が死んでしまいます。

歯髄が死んでしまうと歯は機能を失い根管治療を行い差し歯になってしまいます。状態によっては修復が不可能な場合もあります。治療のためには歯を根っこから抜いて、インプラント、ブリッジ、部分入れ歯などをするしかありませんが、そのままさらに放置しておくと、顎骨の方まで影響が及んでしまいます。

エナメル質の無い根っこに近い場所から始まる根面虫歯の場合なら、早い段階で根の部分が侵され、上のエナメル質は残ったままで歯がポロっと取れてしまうこともあります。

虫歯は、1本の歯で終わるとは限りません。虫歯になった歯の周辺は同じように虫歯になりやすい環境にあると考えられるため、放置しておけば病巣は広がっていくばかり。

他の感染症や傷のように、進行が一定ラインを越えてしまうと自然回復が見込めず、何らかの処置を受けなければ悪化を避けられないのが虫歯の厄介なところなのです。

「乳歯なら放っておいてもいい」は大きな誤解

大人の歯の場合、虫歯で歯が失われてしまうと二度と生えてはきませんが、子どもの乳歯なら、その後には永久歯が生えてきます。そのため、「乳歯は虫歯になっても大丈夫」と誤解されている場合があるのですが、乳歯の下には乳歯が抜ける前から永久歯の基礎がつくられています。乳歯の虫歯を放置しておくと、後に生えてくる永久歯や全体の歯並びにも影響を与えてしまいます。

とくに乳歯はエナメル質が薄くやわらかいため虫歯にかかりやすく、進行が速いのが特徴です。後に生えてくる永久歯を守るためにも、乳歯の虫歯は、永久歯の虫歯以上に早めに受診することが大切です。

乳歯の虫歯を放置していて乳歯が本来の予定より早く抜け落ちてしまうと、その後に生えてくる永久歯が不完全なままだったり、色が白くならずに茶色や黒っぽい色の永久歯が生えてしまったりすることがあります。

虫歯とは?

そもそも、「虫歯」とはどういう状態なのでしょうか?

虫歯の正式名称は「う蝕(うしょく)」、漢字で書くと「齲蝕」となります。歯が細菌によって侵され、蝕(むしば)まれてしまう病気です。

虫歯菌と呼ばれる菌のメインはミュータンス菌という細菌ですが、それ以外にも虫歯の原因となり得るいくつかの菌の存在がわかっています。

それらの菌は、バイオフィルムという強固な巣をつくって歯に付着しますが、その段階ですぐに虫歯が発症するというわけではありません。虫歯菌はバイオフィルムの中で繁殖を始め、その活動の過程ではある種の酸が産生されます。歯は、酸によって溶かされる性質があります。

一定量の酸は唾液の力で中和することができ、しばらくの間は歯の自然修復機能によって歯に穴が開くことは避けられますが、虫歯菌の産生する酸の量やその酸にさらされている時間が長くなってくると、歯の自然修復機能の限界を超え、歯に穴が開いてしまうようになるのです。

つまり、虫歯は細菌による感染症の一種なのですが、風邪などの感染症と異なり、一度歯に住み着いて繁殖を始めてしまった虫歯菌は、自然の免疫機能や飲み薬によって完全に退治することができず、広がったバイオフィルムは歯磨きや洗口液によっては落とすことができず、歯医者さんで何らかの処置を受けない限りは虫歯菌の繁殖が続き、虫歯は悪化していきます。

虫歯発症や悪化の原因は?

歯の自然修復機能や強度、唾液の質や量には個人差が大きく、それによって「虫歯になりやすい人、なりにくい人」が分かれます。

また、虫歯菌は食事内の糖(主にスクロース=ショ糖)を栄養源に増殖し、その過程で酸が生み出されていきます。スクロースが主成分になった代表の糖は砂糖。黒糖、三温糖、グラニュー糖などはすべて砂糖の仲間です。そのため、甘いものの食べ過ぎは虫歯の大きな原因の1つとしてあげられます。

糖の摂取はその量だけでなく、「時間」も問題になります。長い時間糖が口の中に残っているほど虫歯菌の活動が続いて歯が酸にさらされるので、シュガーレス以外の砂糖の多いアメやガムを常に口に入れていたり、甘いジュースをペットボトルで持ち歩いてチビチビ飲んだりしている人は、虫歯発症や進行のリスクが高まることになります。

スクロースは砂糖に限らず、穀物や果物や野菜類にも含まれています。ある程度の食べかすは唾液の自浄作用で中和されますが、残った分は歯磨きで取り除いてあげる必要があります。

とくに就寝中は唾液の分泌が減って細菌の活動しやすい環境になるため、就寝前の丁寧な歯磨きは虫歯予防のためには欠かせません。

ただ、歯磨きでの効果はあくまで「予防」の範囲にとどまります。歯の表面に穴が開いてしまうまで進行してしまった虫歯の悪化を歯磨きで食い止めることはできず、その場合は歯医者さんでの何らかの処置が必要になります。

虫歯の進行の段階

子どもの頃の歯科検診で、歯医者さんが口の中を診ながら、「シーオー」とか「シーツー」とかいう言葉を使っているのを聞いたことがあるかもしれませんが、それは虫歯の進行具合を表す専門の用語です。軽い方から、CO(シーオー)、C1(シーワン)、C2(シーツー)、C3(シースリー)、C4(シーフォー)と5つの段階に区別されています。

このうちで、自然回復の見込める可能性があるのは一番初期のCO(シーオー)だけ。いわゆる「初期虫歯」「要観察歯」と呼ばれる段階で、まだ目に見える穴が開く前の状態です。

そこの段階で気づくことができれば、正しいブラッシングによる口内環境の清浄化や、甘いものを避けるなどの食生活の改善によって歯が自然に回復し、本格的な虫歯に進行するのを防げる可能性もあります。

CO(シーオー)

・初期むし歯
・要観察歯
・穴は開いていないものの、エナメル質のカルシウムやリンが溶け出し(脱灰)、歯が透明感を失って白っぽく濁っている状態。この段階なら再石灰化での自然修復の可能性がある

C1(シーワン)

・歯の一番外側のエナメル質の表面に穴が開いた状態
・まだ痛みは感じない

C2(シーツー)

・エナメル質の奥の象牙質近くまで歯が溶かされた状態
・冷たいものや甘いものがしみるようになる

C3(シースリー)

・象牙質の内部にまで細菌による侵略と炎症が及んだ状態
・何もしなくてもズキズキとした痛みを感じる
・場合によっては歯髄を抜く処置が必要になる

C4(シーフォー)

・歯の神経や血管が通る歯髄の方まで侵されてしまった状態
・最後は神経が死ぬのでかえって痛みを感じなくなる場合もある
・最悪歯の根を残せず抜歯することになり、放置していると歯は抜け落ちて機能を失う

虫歯は放っておかずに歯医者さんへ

軽い傷や風邪なら、「まぁいいか…」で病院へ行かずに放置してしまったとしても、「いつの間にか治った」ということがあります。でも、虫歯にはそれが望めません。

虫歯の初期には自覚症状がほとんどなく、気づいたときにはけっこう進行していたというケースもあります。放置しておく期間が長くなるほどに痛みや治療の負担も増えてしまいます。初期の段階で発見できればその負担はずっと軽くなりますので、虫歯が嫌い!歯医者さんに行くのは気が重い…という人ほど、定期健診の習慣をおすすめします。