2017年12月25日
インプラント

インプラントの種類はどれ位あるの?

インプラントの種類はどれ位あるの?

近年急速に希望する人が増えている歯科インプラント治療。ブリッジや入れ歯と異なり失われた根の部分から再建できるために安定性が良く、機能も見た目も天然の歯と近い状態に復元することができます。

そんな人気のインプラントですが、一口に「インプラント」と言ってもその種類は様々です。世界中には約数百種のインプラントがあると言われており、日本国内を主に流通しているものだけでも50種近いインプラントがあります。

それは単純にメーカーの違いだけでなく、構造の違い、材質の違い、向いている部位や手術方法の違いなど、それぞれにメリット・デメリットが異なります。具体的にはどのような種類があるのでしょうか?

インプラントの構造の違いによる種類

「インプラント」は、人工で体内の組織を補うために埋め込むものの総称で、骨折の修復に使うネジ、人工関節、心臓ペースメーカーなどもインプラントの一種です。

歯科では、抜けた歯の根っこの代わりに顎骨に埋め込む人工歯根(フィクスチャー)をインプラントと呼びます。多くの場合は、その上につながる人工歯が装着される部分(アバットメント)までをまとめてインプラントと表現しています。

このフィクスチャーとアバットメントの構造により、インプラントは1ピースインプラントと2ピースインプラントという種類に分かれています。

1ピースインプラント

フィクスチャーからアバットメントまでが最初から一体につながったタイプのインプラントです。強度に優れ、手術を1回で済ませられる1回法に適応しますが、上部に異変がおこったときに根元から抜いて処置をしなければいけなくなるケースがあります。

2ピースインプラント

人工歯根とアバットメントが別々になっているタイプのインプラントです。状態に応じて組み合わせるアバットメントを変えられ、幅広い症例や部位に使いやすいのが特徴です。ただ、組み合わせるアバットメントは、同メーカーで適合が認められたものに限られます。

インプラントの素材による種類

インプラントの素材は、その多くが高純度のチタンを用いたものです。チタンは金属類の中ではもっとも人間の骨との相性が良く、優れた接合状態を示します。金属アレルギーの可能性も極めて低く安全性が高いため、多くの医療器具で用いられている素材です。

現段階では、安全性や骨との結合の良さの面でチタンに勝る素材は無いと言われ、主なインプラントはほとんどがチタン製です。けれど最近は、ジルコニアなどを使用したメタルフリーのインプラントも登場し、インプラントメーカーとして世界最大手のノーベルバイオケア社がその分野に参入したことで注目を集めています。

表面加工の違いによる種類

同じチタン製のインプラントでも、表面に施された処理やコーティングにはいくつかの種類があります。チタンの表面に酸化の膜をつくったり、ミクロの凹凸を持たせたり、骨の成分と近い素材でコーティングしたり、インプラントが骨とより強固に早く接合できるように工夫され、それらの処理の進化によってインプラント治療の効率は飛躍的に伸びたと言われています。

HAコーティング

HAは「ハイドロキシアパタイト」の略です。ハイドロキシアパタイトは骨の無機質の主要成分です。インプラントの表面を骨と同じハイドロキシアパタイトでコーティングすることで、結合がより早く進むというデータが出ています。

タイユナイト

インプラントメーカーとしてはもっとも古い歴史を持つスェーデンのノーベルバイオケア社独自の表面加工です。インプラントのフィクスチャー表面に厚い酸化層とミクロの孔を設置し、骨との結合を促進させるように作られています。タイユナイトが開発されたことによって、インプラント治療の成功率は大きくアップしたと言われています。

SLA

同じくインプラントメーカーとしては大手のスイス・ストローマン社が開発したインプラントの性状で、インプラントと骨との早期結合が期待でき、比較的短い期間でのインプラント治療が望みやすいと言われています。

ABS

表面に水酸アパタイトを含むβリン酸カルシウムを吹き付け、骨との結合性を高めてあります。表面に不活性物質が残留しないために細胞活性率が良く、他のブラスト処理よりも初期固定が早いと考えられています。

タイオブラスト

二酸化チタンの粒子をフィクスチャーの表面に吹き付けることで表面がザラザラとした状態になっており、その特性が骨結合を強化するようになっているタイプです。

この他にも、表面処理には様々な種類があり、それぞれに特徴や向いている症例が異なります。

インプラントの形状や長さによる種類

顎骨に埋め込むフィクスチャーの部分は、ほとんどがネジ式になっていて顎骨にしっかりと固定できるようになっています。かつてはネジの無いタイプのものもありましたが、最近はあまり使われていません。

そのネジの形状や長さには様々な種類があり、使う部位や顎骨の状態によって向いているものが異なります。

パラレルネジ型

フィクスチャーのネジ全体がほぼ同じ太さで、円筒形をしているインプラントです。安定性があり、一般的にはこちらのタイプがよく用いられていますが、ある程度骨の厚みやスペースが無いと埋め込みにくいのが難点です。

テーパーネジ型

ネジの先が細くなっているタイプのインプラントです。スペースが狭い部分や前歯部、骨が柔らかくてネジによる圧力を穏やかにかけたいときなどに使いやすいのが特徴です。

ザイゴマ型

骨の厚みが極端に薄く、骨造成も難しい症例で使用されるインプラントです。

日本でよく使われているインプラントは?

現在は多くの歯科医院でインプラント治療が行われていますが、使用しているインプラントはそれぞれです。基本的には厚生労働省が認可した種類の中から選ばれますが、歯科医師と患者さんの同意があれば無認可のものを選択することも可能です。日本で使用されているインプラントには、どのような種類があるのでしょうか?

国産インプラント

インプラントは海外メーカーのものも多いですが、日本国内メーカーが製造した国産インプラントも人気があります。国産インプラントは、日本人の顎骨や顔形に合わせて作られているのが特徴です。

京セラ「POIシステム」

京セラの「POIシステム」は、国産インプラントとしてはもっとも古い歴史を持ち、1978年に発売されました。HAコーティング (種類によっては酸化処理タイプもある)を特徴とした細かで丁寧なつくりのインプラントシステムです。インプラントとしての品質や効率性の良さはもちろん、国産でしかも知名度や信頼度の高い京セラ製ということで採用する歯科医院も多いようです。

ブレーンベース「マイティス」

骨との結合性の良いABS表面加工を特徴とした国産インプラントです。日本人の顎骨の形に合わせた設計で、様々な術式や症例に対応した幅の広さが特徴です。ISO13485認証の厳しい品質基準で国内生産されており、現在はアジア各国やアメリカなどにも輸出され、日本の技術の品質は世界でも評価されています。

海外製インプラント

国産インプラントよりも先に使用が開始されたのは海外製のインプラントです。非常に多くの種類がありますが、その中でもとくに人気のある2つをご紹介します。

ノーベルバイオケア「ブロークマルクシステム」

世界でインプラントメーカーとして一番古い歴史を持つのはスェーデンのノーベルバイオケア社です。中でも、「ブロークマルクシステム」というインプラントシステムは1965年以来の伝統があり、世界中でもっとも多くの症例や研究に使われてきました。その信頼性の高さから採用している歯科医院も多く人気がありますが、その分価格も少し高級な傾向があります。

ストローマン「ストローマンインプラント」

1974年頃から使用されているインプラントで、ストローマンはスイスのブランドです。現在はノーベルバイオケア社にも劣らないインプラントのトップメーカーとなり、高い研究開発力で世界のインプラント業界をリードする存在です。独自の表面加工が特徴で、結合の良さや品質には高い信頼が寄せられています。

インプラント選びの注意点

インプラントはメーカーによって多少特徴に違いがあるものの、信頼性のあるブランドのものならどれも品質には間違いないと言えます。ただ、注意しなければいけないのは「互換性が無い」ということです。

とくに2ピースインプラントの場合、フィクスチャーとアバットメントは同メーカーのもので無ければ組み合わせができません。稀に互換性のあるタイプもありますが、基本的には同メーカーのものを使うのが鉄則です。

そのため、他の歯科医院で入れたインプラントを他の歯科医院で修理しようとした場合、そこでは扱っていないインプラントだと対応が難しかったりするケースも多いようです。

インプラントは、一生を通じて定期的なメンテナンスを行っていくことが機能性維持には重要なため、途中で歯科医院を変える際には、どのメーカーのどのような種類のインプラントが入っているかの情報があると治療がスムーズになります。

インプラント本体や治療技術の向上により、インプラント治療の成功率や安定率は飛躍的に伸びたと言われています。けれど一方で、信頼性の不確かなメーカーの極端に安価なインプラントを使用したことによるトラブルが報告されているケースもあります。

治療を選択する際は、単純な価格や手術スピードの速さだけでなく、使っているインプラントの種類、そのメリット・デメリットなどの説明も聞いてから選びましょう。