2017年12月31日
その他

CAD/CAM

CAD/CAM

近年歯科治療の現場で注目されているCAD/CAM。CAD/CAMとは、具体的にどのようなシステムなのでしょうか?

CAD/CAMとは?

CAD/CAM(キャド・キャム)とは、コンピューターを使った設計・加工システムのことです。CADは「Computer Aided Design」(コンピューター支援による設計)の略、CAMは「Computer Aided Manufacturing」(コンピューター支援による加工・製作)の略で、CADに読み込まれたデータで設計デザインを行い、それをCAMに送信して自動的に加工を行うことができるコンピューターシステムです。

一般的に精密な再現や加工の必要な工業分野で幅広く用いられているシステムですが、歯科の場合は主に詰め物や被せ物の製作に使用されています。

歯科用CAD/CAMの使い道

現在歯科でCAD/CAMが用いられるのは、金属を使わないオールセラミックの詰め物や被せ物の加工、CAD/CAM冠と呼ばれるハイブリッドレジンによる被せ物の加工が主ですが、その用途はシステムの進化にともなって広がりつつあり、金属加工、義歯のフレームや土台の加工、模型の加工など、様々な使い道があります。

CAD/CAMが導入される以前は、歯科用の製作物はすべて歯科技工士さんの緻密な手作業によって行われていました。現在も、多くの部分で手作業が必要な部分はあり、従来法のままで作っているものも多いですが、CAD/CAMの出現によって詰め物や被せ物に使える素材が増えたり、納期が短縮できたりと、治療の選択の幅が広くなりました。

歯科用CAD/CAMが広まった背景

歯科での治療にCAD/CAMのシステムが広まった背景には、ジルコニアなどの素材を使ったオールセラミックの普及があります。セラミック、とくにジルコニアは人工ダイヤモンドと呼ばれるほど丈夫で美しい透明度を持ちますが、その性質上従来法では加工が難しく、セラミックは芯に金属を使うのが通常のやり方になっていました。

けれど、CAD/CAMを使用すれば、ブロック状になったセラミックを削り出す加工が可能で、すべてをセラミックの素材にすることが容易です。

オールセラミックは金属アレルギーの心配もなく、見た目もより天然の歯に近い透明度に優れるため、日本でもオールセラミックを使った治療を要望する人が増え、それにともないCAD/CAMの導入も盛んになりました。

実際の治療の場で歯科用CAD/CAMが使用されたのは2000年と言われていますが、本格的に流用し始めたのは2008年ごろからで、2014年からはCAD/CAMを使用して作ったハイブリッドレジンによる被せ物が小臼歯限定で保険適応になっています。

歯科用CAD/CAMのメリット・デメリット

CAD/CAMを使うことでの最大のメリットは、詰め物や被せ物を作る日数が短縮できるということです。その医院が採用しているシステムや歯の状態によっては、たった1日の通院で、その日のうちに白い詰め物や被せ物をして帰るということも可能になりました(システムや状態により異なります)。

また、人件費や間の工程を省けることから、セラミックの価格を抑えられるケースもあります(使用する材料によっては反対に高額になることもあります)。

データを直接口内カメラの映像から得られるタイプのスキャンを使っているシステムの場合なら、型取りの治療過程も省略できることがあります(状態によります)。

加工は1つの塊になった素材のブロックを削り出してつくるシステムが多いため、継ぎ目の無い詰め物や被せ物が作れ、破損しにくいメリットもあります。

一方、デメリットとしては、工業用品と違って歯科の製作物は「1つとして同じ形のものがなく、患者さんの状態に合わせた臨機応変な対応が必要」という特質があり、機械ではやはり対応しきれないシーンが出てくるということです。その面では、熟練した歯科技工士さんの技術に敵いません。

とくに、システムの出始めの頃はCAD/CAMの性能もイマイチで、適合性が悪い、使える素材が少なく色合わせが難しい、作った詰め物が合わないなどのトラブルも多かったようです。現在はその性能が格段に上がり、システムも素材も進化しているためにデメリットの部分はだいぶ改善され、歯科製作の重要な存在として、多くの歯科技工所や医院がCAD/CAMのシステムを取り入れるようになってきています。

ただ、やはりそれを使う歯医者さんや歯科技工士さんのセンスに仕上がりが左右されるのは手作業と同じです。車に使用する部品と異なり、歯科での製作物は人間相手のもので、その適応性を見極め、状態に合わせた臨機応変の対処のためには、歯医者さんや歯科技工士さんの熟練された目や腕が大きく関わります。

また、CAD/CAMのシステムや使う素材にも様々な種類があるため、CAD/CAMで作ったからと言ってすべてが同じクオリティになるというわけではありません。

どのような方法で作ったとしても、被せ物や詰め物の適合性や機能性は歯周の状態にも左右されます。せっかくの優れた被せ物や詰め物を長持ちさせるためには、定期的なチェックを受け、歯や歯ぐきや骨の健康を守るためのお手入れを欠かさないことも重要です。

保険適応のCAD/CAM冠とは?

ジルコニアなどのセラミック素材を使った場合、CAD/CAMでの製作物はすべて自費診療となりますが、ハイブリッドレジンを使った白い被せ物のCAD/CAM冠は、小臼歯(前から5番目の歯と6番目の歯)限定で保険適応が可能になりました。

ハイブリッドレジンとは、歯科用プラスチックのレジンにセラミックの粉末を混ぜて丈夫にしたものです。小臼歯限定でのCAD/CAM冠の保険適応は、2014年の4月から始まった試みです。

前歯に関しては、それ以前から白い素材での治療が保険内で認められていますが、「前から4番目の歯まで」というのが決まりでした。小臼歯より奥の大臼歯では、金属アレルギーの診断が出ている人に限り、CAD/CAM冠が保険適応になるケースがあります。

CAD/CAM冠は、その医院や提携の歯科技工所がCAD/CAMのシステムを導入していなければ無理なので、どこの医院でもその治療が受けられるというわけではありませんが、最近は採用しているところが増えてきています。

CAD/CAM冠のメリット・デメリット

保険適応で白い被せ物ができるということで、とても魅力的なCAD/CAM冠ですが、やはりデメリットもあります。

メリット

・保険適応で白い被せ物を小臼歯に使うことができる
・白い素材なので見た目に優れる

デメリット

・ハイブリッドレジンはセラミックや金属よりも強度に劣る
・長く使っていると着色の可能性があり、作り直しが必要なことがある
・状態によっては適応しないケースがある

CAD/CAM冠の素材は、白い見た目ではありますが、セラミックとは異なり主な部分はレジン(プラスチック)です。セラミックの粉末を混ぜて丈夫にはしてありますが、セラミックや金属に比べると強度に劣り、力のかかりやすい臼歯への適応が難しいケースもあります。

その部分を支台に義歯などを使った場合、トラブル発生の可能性が高くなったりする面も指摘されているため、それぞれの状態に応じ、場合によっては金属や自費でのセラミック治療がすすめられることもあります。

また、ハイブリッドレジンはセラミックに比べると着色しやすく、経年利用で黄ばんでしまうことがあるため、見た目が気になるときにはやり直しをしなければいけない場合もあります。マメにメンテナンスを受け、着色しやすい濃い色のコーヒーやカレーなどを控えるなどの工夫をすると、着色はある程度避けることができます。

いずれにしても、歯の詰め物や被せ物には様々な素材があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。CAD/CAMでの治療の際も、システムや価格にはかなりバラつきがあるため、メリット・デメリット、価格などを確認し、納得した上で選択することが大切です。