2018年03月17日
歯周病

歯周病の治療ってどういう事をするの?

歯周病の治療ってどういう事をするの? 

虫歯と違って痛みがあまりおこらず、いつの間にか進行してしまうことの多い歯周病。歯肉から症状が現れますが、実は歯を支えている骨が細菌によって侵されていく病気です。歯周病の治療では、どういう事をするのでしょうか?

歯周病の重症度とそれぞれの治療

軽度

・歯肉からときどき血が出る
・歯肉が軽く腫れたりプヨプヨとした感じがする
・口臭が気になるようになる
・歯周ポケットが2~4㎜内

◆主な治療

・正しいブラッシング指導
・プラークや歯石を取り除くクリーニング
・口内環境を整える
・薬剤での殺菌治療が併用されるときも

中度

・歯肉から血や膿が出る
・歯肉が明らかに腫れて色が変わっている
・歯肉がブヨブヨになる
・歯を噛み合わせるとうずいたり浮いたりするような感覚がある
・口臭が強くなる
・歯周ポケットが4~6㎜程度

◆主な治療

・軽度の基本治療で改善が見られなければより深部へのクリーニング
・歯肉を一度はがして病巣を取り除くフラップ手術
・歯肉や骨の状態によっては再生治療が行われることも

重度

・歯肉の形が崩れる
・歯がグラグラとする
・歯周ポケット6㎜以上

◆主な治療

・保存できる歯とできない歯を見極め、残せる歯は外科治療後固定する
・残せない歯は抜歯し、歯肉や骨の形成手術や再生手術後にブリッジやインプラントなど

歯周病治療の基本は正しい歯磨きとクリーニング

歯周病の主な原因は、歯と歯肉の間にこびりついたプラーク(バイオフィルム)や歯石の中に住む歯周病菌です。歯周病治療の基本は、そのプラークや歯石を徹底的にクリーニングすることから始まりますが、歯肉の腫れがひどいときには炎症がある程度落ち着いてからクリーニングを行う場合もあります。

腫れた歯肉の状態を改善させるために必要なのは、毎日の歯磨きでのブラッシングを患者さん自身に正しく実行してもらうことです。歯周病の治療自体は歯科医師や歯科衛生士が行いますが、患者さん自身のセルフケアも治療効果を大きく左右するポイントになるのです。

自宅での歯磨きだけでは取りきれない部分は歯科医院でのプロケアが不可欠なので、自宅でのセルフケアと歯科医院でのプロケア、その両方を行っていくことが歯周病治療には大切です。

プラークや歯石のクリーニングは、歯科衛生士か歯科医師が専用の器具や機械を使って行います。そして、プラークが再接着しないように、自宅での正しい歯磨き法を患者さん自身にも続けてもらいます。

歯周病がまだ初期の段階で骨が溶かされていないうちは、自宅で正しい歯磨きケアを続けながら定期的なクリーニングを受けるようにすれば回復が望めます。悪化した歯周病には他の治療が必要になりますが、正しい歯磨きとクリーニングはすべての治療の基本として欠かせない存在です。

なぜ歯周病の治療に歯磨きやクリーニングが重要?

プラークはいわゆる「歯垢(しこう)」で、初めのうちは白~黄白色の柔らかい物体で歯ブラシで落とせますが、じきに強力な粘着力でネバネバと歯にこびりつき、歯肉の内側にも入り込んで磨いても取れなくなっていきます。それは単純な食べかす汚れでは無く、食べかすをエサに住みついてしまった細菌達の巣です。歯石は、プラークと唾液中のカルシウムが結びついて石のように硬くなったものです。

一口に細菌と言ってもたくさんの種類が口の中には存在していますが、歯周病の原因菌には歯を支えている骨を溶かしてしまう性質があります。運悪くそのような菌がプラーク内で増殖してしまった場合、その周辺の歯肉に炎症がおき、その後骨が少しずつ破壊されていくため、歯肉の腫れ、出血、膿、歯のグラグラなどの歯周病の症状が現れます。

そのまま放置しておけば最後には骨が完全に破壊され、支えを失った歯は根元から抜け落ちてしまいます。

歯周病菌がプラーク内で増殖する原因には、体質、免疫力の低下、ホルモンバランスなど様々な要素が関わりますが、いずれにしてもこびりついてしまったプラークが歯周病を悪化させる直接的な原因です。そのため、歯周病治療の基本はプラークの除去と再接着を防ぐプラークコントロールになります。

せっかく治療で歯周病が良くなったとしても、再びプラークがたまれば歯周病は再発する可能性が高いため、正しいセルフケアと定期的なクリーニングの習慣を続けていくことが大切です。

殺菌作用のある薬剤を使う治療
歯周病の原因菌も細菌の一種なので、物理的に取り除くだけではなく、薬剤を使った対応が有効な場合もあります。その方法は様々ですが、安全性の高い高濃度次亜塩素水という殺菌作用の強い溶液で歯周ポケット内を洗浄したり、菌を殺す抗生物質の内服を合わせたりすることがあります。

また、殺菌作用のある薬剤をマウスピース内に入れ、一定期間使用する治療法もあります。この治療を行う場合には詳しい検査で菌の種類を特定し、経過観察をしながら効果をチェックしていきます。保険は適応されない治療で設備もいるので、行っている歯科医院はそれほど多くないようです。

レーザーを利用した治療

特殊な光や熱の力を利用したレーザーには、抗菌作用や組織の活性化が期待されているものもあり、歯周病治療の補助として用いられることがあります。

進行した歯周病には外科治療

歯周病が進行して骨が溶かされてくると、歯と歯肉のすき間(歯周ポケット)が深くなっていきます。その状態ではクリーニングや薬だけの治療が効かず、外科的な治療が選択されるようになります。

◆フラップ手術

歯肉をいったんはがし、深い部分のプラークや病巣の除去を行い、骨などの状態に応じて処置をした後に歯肉を閉じる一連の外科治療です。手術は歯科医師が担当し、局部麻酔を行うので強い痛みを伴うようなものではありませんが、経過を見ながら順番に処置を行うので治療期間がかかります。

◆破壊された歯周を再生させる治療法

骨などがあまり破壊されていないうちはプラークコントロールによって治癒が望めますが、歯周組織の破壊が進行した状態をプラークコントロールだけで自然治癒させることはできません。現在は、それらの組織の回復が期待されるいくつかの治療法があります。

組織再生誘導法(GTR)

外科治療を行った後の歯周組織にはある程度自然の再生能力が期待できますが、一番早く再生するのは歯肉の部分のため、自然に任せておくと歯や骨の部分も歯肉のような上皮に置き換わってしまいます。そこで、本来歯や骨として再生してもらいたい部分を特殊な人工膜でかこみ、上皮細胞の侵入を防いで歯や骨の再生を促す方法です。

使用する人工膜には、4フッ化エチレン製、コラーゲン製、合成高分子製などがあり、素材によって生体に吸収されるものとされないものがあります。吸収されない素材を使った場合にはそれを取り除く2次手術が必要ですが、その分治療期間の調整ができるので効果は得やすいと言われています。

エムドゲイン®再生療法

エムドゲイン®は、歯周組織の再生に関わるたんぱく質や成長因子の含まれた生体由来の薬剤です。エムドゲイン®はゲル状になった塗り薬で、これを外科治療の終わった部分に塗るとセメント質などの再生を促し、歯周ポケットの再付着を助けることが期待されています。

骨移植

組織再生誘導法を行う際に、空間となった部分に移植用の骨剤や自分の骨からとった自家骨粉末をつめ、骨の移植を試みる再生法です。

歯肉再生法

歯周病の進行によって減ってしまった歯肉を再生させる治療法です。口内の粘膜の一部を失われた部分に移植し、固定してその定着を待ちます。

歯周病が改善された後の治療

一連の歯周病治療によって歯周の状態が回復してきたら、その後の処置を行います。重度歯周病で治療後も歯が不安定な場合には、歯を補強して安定させる治療を行う場合があります。進行がひどくてやむを得ず歯を抜いてしまったり、歯が抜け落ちてしまったりしている場合には、義歯を補います。抜けた後の歯を補う方法は、両側の歯を支えに人工歯を固定するブリッジ、取り外し式の部分入れ歯、骨に人工歯根を埋めて建て直すインプラントがあります。

いずれにしても、歯周病の治療後にプラークコントロールを怠れば、歯周病は簡単に再発してしまう可能性があります。また、ヘビースモーカーの人は歯周病にかかりやすく、かかると回復しにくいことが知られています。せっかく治った状態をできる限り維持するためには、毎日の地道なセルフケアと、定期的な歯科医院でのクリーニング、生活習慣の改善などを続けていくことが大切です。