2018年04月21日
一般歯科

歯磨き粉ってどういうものが良いの? 

歯磨き粉ってどういうものが良いの? 

毎日歯のケアで使う歯磨き粉。歯磨き粉は、含まれる成分によって様々な効能が期待されているものがあります。適切なブラッシングと歯磨き粉を合わせて使うことで、口内の清掃効果が高まると研究でも示されています。お口の状態や目的に応じ、自分に合った歯磨き粉を探してみましょう。

薬用(医薬部外品)と一般歯磨き粉の違い

歯磨き粉には、薬用(医薬部外品)の表示がされているものと、化粧品の扱いのものがあります。その違いは、成分に厚生労働省が認めた有効成分が規定量含まれているかどうかです。歯磨き粉の基本的な成分は、清掃剤(研磨剤)、湿潤剤、粘結剤、発泡剤、香味料などですが、薬用の歯磨き粉には、特定の効果効能が認められた有効成分が配合されています。「薬用」と「医薬部外品」は表現の違いだけで、同じ意味で使われます。

化粧品扱いの歯磨き粉でも、基本の清掃効果は期待されます。また、有効成分を含んでいてもあえて薬用申請していない製品もあり、薬用の方が効果として必ず優れているというわけではありませんが、「虫歯予防」「歯周病対策」「口臭対策」など、自分の目的に合わせて歯磨き粉を選びたいときには、どのような有効成分が含まれているかが1つの目安となります。

ただ、注意したいのは、いくら薬用の歯磨き粉であっても、あくまで「予防」の効果が認められているだけで、すでにかかっている虫歯や歯周病を治す働きは無いということです。痛みや腫れなどの症状が気になっているときには必ず歯科医院を受診しましょう。

歯科専売品と市販品の違いは?

歯磨き粉は薬用も含めてドラッグストアやスーパーで購入ができますが、一方で歯科医院だけで取り扱っている歯科専売品もあります。有名どころのシリーズでも、歯科専売品になると一般のお店では取り扱っていません。その違いは、主に成分の濃度などの違いです。歯科では担当の歯科衛生士や歯科医師に相談の上で選択ができるので、より口腔衛生に特化した製品が扱われています。現在治療中の人は、歯科医院で歯磨き粉選びを相談してみるのもいい方法です。

虫歯予防の歯磨き粉

虫歯予防を重視して歯磨き粉を選びたいなら、フッ化物配合のものが適しています。フッ化物は歯質を強化する性質のあるフッ素の化合物で、フッ化ナトリウム(NaF)、モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)、フッ化第1スズ(SnF2)などが有効成分として認められています。

フッ化物は製品によってフッ素の配合濃度に差がありますが、2017年の3月に1000ppmを超える高濃度フッ素配合の歯磨き粉が日本では初めて薬用として承認され、それ以来1500ppmに近い高濃度の薬用歯磨き粉が大手メーカーから立て続けに発売され、注目を集めています。

基本的には高濃度のものほど虫歯予防の効果は期待され、歯質が弱く虫歯になりやすい人にはおすすめですが、濃度によって子どもの使用が制限されているものがあります。お子さんが使用する場合は「子ども用」として販売されているものを選ぶか、製品の注意書きをよく読んで選ぶようにしましょう。

歯周病予防の歯磨き粉

歯周病を予防する歯磨き粉としては、殺菌、出血防止、抗炎症作用、血行促進作用、歯肉の引き締め作用などの有効成分配合のものが相応します。殺菌は、口内の細菌の繁殖を抑えるもので、塩化セチルピリジニウム(CPC)、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)などが代表です。

歯肉からの出血が気になるときは、出血予防のトラネキサム酸、赤みなどの炎症にはグリチルリチン酸やε-アミノカプロン酸、ヒノキチオールなどの成分が向いています。歯肉を引き締める成分は、塩の主成分の塩化ナトリウムやアスコルビン酸(ビタミンC)がよく知られています。

かつては殺菌成分としてよく使われていた成分にトリクロサンというものがありますが、2017年9月にFDA(アメリカ食品医薬品局)がトリクロサン使用の製品を販売停止し、日本でも薬用石けんについては成分の切り替えを呼びかけています。その理由は、環境破壊への影響が指摘されたこと、殺菌効果に不確かな面が出てきたことなどです。現在日本では歯磨き粉に関しては使用停止されていませんが、多くのメーカーが自主的に成分の切り替えを行っています。

知覚過敏対策の歯磨き粉

虫歯や傷はないのに歯がしみてしまう知覚過敏。歯肉の減り、歯ぎしり、エナメル質が薄くなることなどが原因と考えられていますが、いまだ詳しいメカニズムがわかっていない面もあります。そんな知覚過敏対策の歯磨き粉として、すっかりおなじみになっているのは『シュミテクト』。海外では『Sensodyne(センソダイン)』の名で知覚過敏専用歯磨き粉としてロングセラーを続ける製品です。シュミテクトには、神経への刺激の伝達を防ぐ硝酸カリウムという有効成分が含まれ、歯をしみづらくする作用が認められています。

それ以外に、乳酸アルミニウムという有効成分もあります。こちらは、神経への刺激を伝える象牙細管という管の入り口を封鎖する成分で、硝酸カリウムと同じく知覚過敏対策の成分として使われています。

口臭予防の歯磨き粉

多くの歯磨き粉には、使用後の口を爽やかにするための香味料として、メントールなどが含まれています。エチケットや気分のリフレッシュとしてはそれだけでも効果がありますが、本格的に口臭予防をしたい場合には、歯周病対策と同じ殺菌成分や、口臭ガスを抑える塩化亜鉛配合の歯磨き粉などがあります。

口臭の原因は様々ですが、多くの場合は口内の汚れを細菌が分解することで発生するガスが関わっています。強い口臭には虫歯や歯周病の疑いもあるので、続くときには歯科医院を受診しましょう。また、歯磨き粉の成分は、歯と歯の境目などには届きません。フロスや歯間ブラシを使ってしっかりと汚れを落とすことが大切です。

歯を白くする歯磨き粉

近年とくに人気が出ているのは、「歯を白くする」とうたわれた歯磨き粉です。けれど、実は歯磨き粉ならすべての製品で「歯を白くする」と書くことができます。歯磨き粉には清掃剤が含まれていて、「歯の汚れを落とす=歯を白くする働きがある」と判断することができるからです。

一方、有効成分として、着色汚れに効果効能が認められているものもあります。タバコのヤニを溶解する成分としては、ポリエチレングリコール(PG)や、歯石やヤニ汚れをつきにくくするポリリン酸ナトリウムなどがあります。

また、歯を白くする歯磨き粉として有名な『アパガード』などには、歯の再石灰化を促す薬用ハイドロキシアパタイトが配合されています。ハイドロキシアパタイトはエナメル質の主成分で、これが溶け出すと歯の表面から輝きが失われ、ザラザラとくすんだ印象の歯になります。薬用ハイドロキシアパタイトは、エナメル質の再石灰化を促し、本来の歯のツヤを取り戻す作用が期待されています。

薬用の歯磨き粉には「ホワイトニング」と書かれたものも多いですが、歯科医院で行うホワイトニング治療のような漂白作用はありません。歯磨き粉のホワイトニング効果とは、歯の表面についた汚れを落として自分本来の歯の色を取り戻したり、歯に汚れがつきにくいようにコーティングしたりする範囲です。日常の着色汚れを防いだり、汚れのつきにくい状態に導く効果や、ホワイトニング治療後の後戻りを遅らす効果が期待されています。

長年頑固にこびりついた着色汚れ、加齢による色の変化、元々の歯質が黄色っぽいなどの人の場合は、歯磨き粉で歯を白くすることはできません。無理にゴシゴシするとかえって歯の表面を傷つけ、くすみや黄ばみを増してしまうこともあります。自分の歯の変色が何によるものかわからない場合には、歯科医院で相談してみましょう。