2018年06月26日
歯周病

歯周病を放っておくとどうなるの?

歯周病を放っておくとどうなるの?

歯周病は、歯を支えている骨が溶けてしまう病気です。そのため病状が悪化すると、歯が抜け落ちてしまうこともあります。

そんな恐ろしい歯周病ですが、別名「沈黙の病」と呼ばれるように、初期には自覚症状がほとんどありません。そのため、気付かない間に症状が進んでしまうことも。厚生労働省の調査では、成人の約7割が歯周病にかかっていると言われています。

初期の歯周病

細菌によって歯肉に炎症が起こっていますが、この時点ではまだ、歯を支えている歯槽骨は無事です。飲み物がしみたり、痛みを感じたりといったこともありません。

初期の歯周病なら、歯科医院で歯のクリーニングを受けたり、正しいブラッシングを続けたりといったことで、比較的短期間で治療ができます。

ただ、自覚症状がほとんどないので、気をつけていないと見逃してしまいがち。歯磨きのときに血が出る、歯茎が赤くなっているといった症状があったら、すぐに歯周病を疑ったほうがいいでしょう。

中期の歯周病

歯周病が進行すると、次第に歯肉が痩せてきます。すると、今まで歯肉に隠れていた歯の根元の部分が出てきて、歯が伸びたように見えます。また、冷たいものや熱いものを口に含むと、その歯の根の部分にしみて痛みを感じるようになります。

歯肉の炎症も悪化して、ときには出血だけでなく膿が出ることもあります。同時に、口臭もひどくなってきます。すでに病巣が歯槽骨まで及んでいるので、固いものを噛んだ時に、歯がぐらつくような感覚や痛みを感じることも。

こうなると、歯のクリーニングやブラッシングだけでは、なかなか症状が改善しません。場合によっては、歯周外科手術で歯肉を開いて、クリーニングを行うこともあります。

重度歯周病

歯肉が真っ赤に腫れ上がって、素人目にも病変がはっきり分かる状態です。

歯槽骨がかなり溶けてしまっているので、舌で歯を触るとぐらぐらします。食事のたびに歯に痛みを感じるので、日常生活も不自由になります。この段階になると、いつ歯が抜け落ちてもおかしくない状態です。

歯周病によって溶けてしまった歯槽骨は、いくらクリーニングしても自然に再生することはありません。そのため、歯周外科手術によるクリーニングを行ってから、歯槽骨の再生治療を受けることになります。

歯槽骨の再生手術にはいくつかの方法がありますが、再生できるかどうかは個人差があり、骨の溶け方によっても再生のしやすさが違ってきます。

どうしても保存不可能な場合には、残念ながら抜歯となります。

歯周病の進行は防げる?

重度歯周病の症状を読むと、「歯周病ってこんな恐ろしいことになるの!?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
日本の成人の7割は歯周病と言われてはいるものの、多くの方は「歯磨きでたまに血が出る」「何となく歯肉が腫れている」程度の自覚で、進行するまでは大きな痛みもないため重大な病気という意識が持てないのが普通です。

しかし、歯周病は放っておくとジワジワと進行します。歯周病とは、歯肉や歯を支える骨などに刺激を与える毒素を発生する細菌による感染症で、いったん感染すると自然に治るということがありません。初めは歯肉への被害だけですが、じきに歯を支える骨の方まで毒素による炎症が広がり、骨が失われていきます。

けれど、歯科医院での適切な処置と、自宅でのセルフケアを正しく続ければ、多くの歯周病は進行が防げます。初期の段階なら元の健康な歯肉に戻れる可能性もあるのです。

昔は、歯周病のメカニズムがよくわかっておらず「不治の病」とも言われていましたが、現在は研究や技術の進化により、進行を防ぎ歯を守れるようになってきています。10年前と比べても、歯周病で歯を失う割合は減少しています。

ただ、いったん改善しても、口内環境が悪くなればすぐ再発してしまう可能性の高い病気で、年齢とともに歯周病リスクは高まっていきますので、毎日の歯の清掃や歯科医院での定期クリーニングを地道に続けていくことが大切です。

歯周病が不安なときは?

最近は歯周病に関する情報も多く、その恐ろしさもだいぶ知られてきているため、自分が歯周病かどうか、どの程度の状態か不安だという方もいらっしゃると思います。そんなときには1人で思い悩まず、まずは歯科医院で歯周病の状態を検査してみましょう。

歯肉の腫れや出血は、多くが歯周病によるものですが、他の病気や外傷が原因になっていることもありますし、体質によっては歯周病にかかっても出血しにくい方もいます。歯周病と診断するためには、症状に加え、骨の状態を見るレントゲン撮影や、専用の器具を使って歯周ポケットの深さを測る検査などが必要です。

歯周病は放っておくとたしかに恐ろしい病気ですが、早めに適切な対処と地道なケアを続ければ、歯肉や骨を守れる可能性が高いのです。一口に歯周病と言っても個人個人で状態が違いますので、まずはお口全体や骨の状態を調べ、必要な改善方法を考えていきましょう。

歯周病を防ぐには?

現在は治療技術の進歩により多くの歯を残すことができるようになってきましたが、歯周病は日ごろの心がけもとても大切な病気です。生活習慣によって状態が大きく左右されるため、生活習慣病の1つとして扱われています。

歯周病の予防と対策のために、以下のことを注意しましょう。

・毎日歯を丁寧に清掃する
・3~6ヶ月に1回歯科医院でクリーニングと検診を受ける
・バランスの良い食事を心がけ、砂糖の多い間食は控える
・禁煙をする

毎日歯を丁寧に清掃する。

歯周病の進行を防ぐために一番大切なのは、「口内環境を良好に保つ」ということです。歯周病は細菌による感染症ですので、口の中が不潔だったり状態が悪かったりすると進行しやすくなります。

歯周病の原因菌は、プラークという透明の膜(バイオフィルム)の中で繁殖します。プラークは歯の表面についているネバネバとした物体で、その正体は単なる食べかすではなく、中に無数の細菌を包み込んだ細菌達の住みかなのです。

プラークの形成を完全に防ぐことはできませんが、毎日正しい歯の清掃を行うことでプラークの増大を抑えることができます。
歯磨き後、試しに歯を自分の下でなぞってみてください。もし、ツルツルせずにネバネバ・ザラザラしていたら要注意です。

歯磨きのブラッシングは力を入れ過ぎず、1本1本の歯を様々な角度から丁寧に磨くようにしましょう。歯と歯肉の境目や裏側などは磨き残しやすいので意識して磨きます。歯肉が腫れて出血しやすい方は、やわらかめの歯ブラシを選びましょう。

また、歯周病が進行してくると歯肉が痩せ、歯と歯肉の境目にすき間が見えてくるようになりますが、その部分は適切な大きさの歯間ブラシを使って磨きましょう。歯間がほとんど無い部分はデンタルフロスを使い、歯と歯の隣接面の汚れを落とします。

歯周病が気になる方は、歯周病対策用の歯磨き粉や洗口液を使用するのもいいと思います。ただ、それらはあくまでも補助で、感染した歯周病を治せるわけではないので注意しましょう。

3~6ヶ月に1回歯科医院でクリーニングと検診を受ける

歯周病対策の第一は、患者さん自身が自宅で行う毎日のセルフケアです。しかし、歯周病の原因菌は空気を嫌う細菌で、歯と歯肉の境目の奥(歯周ポケット)に住み着き、しかも強力な膜(バイオフィルム)によって守られているため、自宅での歯ブラシや歯磨き粉の力だけでは落とすことができません。

また、歯並びの悪い部分や奥の方は歯ブラシが届かず、しっかり磨いているつもりでも汚れがたまってしまっていることが多いのです。古い詰め物や部分入れ歯の周辺もプラークがつきやすく歯周病のリスクが高いエリアです。

歯周病の予防や改善のために毎日のセルフケアが欠かせないのは確かなのですが、歯ブラシで届かない部分や硬くなった歯石のクリーニング、合わない詰め物や義歯の調整などは歯科医院でのケアが不可欠です。

そのため、3~6ヶ月に1回は歯科医院でのクリーニングや検診を受けましょう。状態の良い方は半年に1回、状態が不安定な方はもう少し短い間隔で通う必要があるかもしれません。プロケアとセルフケア、その両方を合わせて行い、歯周病の予防・改善に取り組んでいきましょう。

バランスの良い食事を心がけ、砂糖の多い間食は控える

口の中の健康と食事は切っても切れない関係です。細菌達の一番の栄養源は糖質の中のショ糖ですので、ショ糖を主成分とした砂糖の多い食品をたくさん食べていると口内環境が悪くなりやすくなります。
砂糖が虫歯の原因になることはよく知られていますが、歯周病にも悪影響を与えます。過度の飲酒や刺激物の摂り過ぎも口内環境を悪化させる元です。

また、ビタミンCが不足すると歯肉が弱くなり、簡単に出血しやすくなることがわかっていますし、全体の栄養バランスが乱れて体の免疫力が低下すると、歯周病も悪化しやすくなります。

歯周病のケアは全身のケアと同じで、食事バランスも状態に関わってくるのです。歯周病の改善のためには、糖質(甘いもの、パン、ごはん、麺類など)だけに偏らず、野菜、海草、魚介類なども適度に取り入れたバランスの良い食事を心がけましょう。

・禁煙をする

喫煙する人はしない人に比べて歯周病にかかりやすく、かかると進行が早くなる割合が高いことが報告されています。治療をした場合もなかなか効果が現れず、治療が難航しやすい特徴もあります。
歯周病の予防や改善を望むなら、禁煙することが推奨されます。

歯周病対策の基本はプラークコントロール

進行した歯周病には外科的な処置や薬剤の使用をすることもありますが、歯周病対策の基本はプラークをコントロールし、口内環境を良好に保つことです。

そのために行う歯科医院でのクリーニングやお手入れの指導は、歯科衛生士が専門家です。歯科医と歯科衛生士が連携して歯周病の治療にあたります。
歯周病が気になって歯科医院を受診するときは、歯科衛生士がいる歯科医院を選ぶと良いでしょう。

クリーニングでは、歯石を取り除き、専用の器具で全体を磨き、プラークや汚れを取り除くとともに、表面をツルツルにして汚れがつきにくい状態に仕上げます。
そうやって綺麗になった口の中を維持し、歯周病リスクの低い状態を保つためには、自宅で行う毎日の歯の清掃がとても重要です。