2018年07月10日
インプラント

インプラントのメンテナンス

インプラントのメンテナンス

インプラントの脱落・破損の原因

インプラントの手術を行えば、ほぼ天然の歯と同じようにものを噛むことが可能となり、それまで歯が不自由だった方でも、日々をより快適にすごすことができるでしょう。しかし、インプラントの根元にあたるフィクスチャーが埋め込まれている顎の骨に異常があったり、歯周病が重度に進行してしまったりした場合は、インプラントが抜け落ちてしまうことがあります。

せっかく高額な費用をかけ手術を受けて入れてもらったインプラントをだいなしになんてできません。そんなことが起きないように定期的な検診と日々のケアが必要になるのです。

歯科医院での定期健診

術後しばらくは2~4ヶ月に1度、1年以上が経過したら半年に1度ぐらいの検診が理想です。検診では主にかみ合わせのチェック調整。インプラントの破損の大きな理由のひとつがかみ合わせの悪さといわれていますが、きちんと検診を受けておけば、ほとんど問題はないのです。また細かい隙間に入り込んだ汚れの除去も行います。インプラントには神経がなく、異常が深刻な状態になるまで気づけない危険性があるため、定期的な検診は非常に重要といえるでしょう。

検診は手術を受けた医院で受けるのがベストですが、引っ越しや長期出張などにより他の医院に頼らざるを得ない状況になったら、最初の担当医に紹介状を必ず書いてもらいましょう。紹介状には治療に必要な情報が書いてあるので、他の医院でもより適切な治療を受けることができるはずです。

ちなみに海外で手術を受けた場合は、器具の種類によっては日本で対応できないことがあります。手術を受ける前に日本に提携医院があるかどうかを確認しておいてください。当然、日本から海外に引っ越す可能性がある場合も同様に注意です。

日々の自宅でのケア

ケアといっても天然の歯の扱いと大きな違いはありません。重要なことはきちんと歯を磨くことで清潔を保ち、歯周病予防に努めることです。インプラントの場合どうしても、接合部に汚れがたまりやすいので、通常のブラッシングに加え歯間ブラシによるケアをするとよいでしょう。またデンタルフロスやデンタルリンスも効果的。

なお自宅でのケアについては、自分にあった方法を担当医に指導してもらう必要があります。自己流だとトラブルの原因を作りやすいです。口臭がきつくなったと感じる場合は適切なケアができていない可能性があるので、すぐに検診に行く必要があります。

インプラントも天然の歯もメンテナンスは同じ

「インプラントのメンテナンス」と言うとなんだか特別な感じもしますが、上でもご紹介した通り、結局は天然の歯を守るのと同じことです。歯磨き方法の指導を受けて自宅で実行し、定期的に歯科医院でチェックやクリーニングを受ける。そのくり返しです。

インプラントをされている方に限らず、そういう意識はお口の健康をできるだけ維持するためには大切なことです。

現在のインプラントの耐久性は、昔と比べて格段に進化しています。しかし、いかに優れたインプラントであっても人工物なので、ネジのゆるみや摩耗などがおこることはありますし、埋めた部分の歯肉や骨の状態が悪くなってしまえば、残念ながら抜かざるを得ないことがあります。

インプラントを長持ちさせるために定期検診や日ごろの正しい歯磨きは欠かせませんが、それ以前に、ていねいな歯磨きや検診の習慣が身につけば、口内環境全体が良くなります。メンテナンスと難しく考えず、歯周病や口臭を予防し、インプラントとともに残った歯を良い状態で保ち、しっかり噛め、美しい口元を維持するための習慣と思って取り組んでみてはいかがでしょうか。

インプラントのメンテナンスに大切なこと

インプラントのメンテナンスを行うなら、できるだけ効果的にと考える方も多いと思います。インプラントのメンテナンスでは、どのようなことを意識すればいいのでしょうか?

指示通りの間隔で健診に通う
インプラントのメンテナンスで重要なことは、担当医の指示通りの間隔で健診に通っていただくことです。どの程度の頻度で通わなければいけないかは状態によりますので、自己判断をせず、担当医の支持に従いましょう。

安定したインプラントは自分の歯のように使うことができますが、脳に刺激を伝えるための歯根膜や神経は存在していません。そのため、何かの不具合がおこっていても自覚が難しいのです。特別な問題を感じないからと通院を止めてしまわないことが大切です。

もし、指示された通院が難しい場合には、その理由を正直に伝えてください。非常に多忙で止むを得ないときもあるかと思います。可能な範囲でメンテナンスが行える方法を担当医と相談しましょう。
一番良くないのは、健診のドタキャンなどが続いて行きづらくなり、歯科医院から足が遠のいてしまうことです。

指示された歯磨き法やアドバイスを守る

インプラントのメンテナンスでは、毎日の歯磨きや生活習慣の心がけなども重要です。インプラントの手術が終わったら、状態に合わせて歯磨き法や飲食物・生活習慣へのアドバイスがあると思います。

インプラントの状態を良好に保つためには、それらのアドバイスもできるだけ守っていただくことが大切です。

気になる変化があったら歯科医院に連絡する

健診の日まで間があるときでも、何か気になる変化があったら歯科医院に連絡して状態を伝え、予約を早められないか確認しましょう。

とくに、急に口臭が出るようになった、インプラントの周囲から出血する、噛み心地が悪くなった、ぐらぐらして感じることなどがあれば、早めの対処が必要です。

メンテナンスを怠ると?

インプラントのメンテナンスの大切さをお伝えしましたが、もし、メンテナンスを怠ってしまうとどういう結果が考えられるのでしょうか?

インプラントの劣化が早くなる

一体型のインプラントを除き、インプラントは骨に埋まっている部分と人工歯が部品で接続されています。インプラントには毎日かなりの負荷がかかりますので、そのネジがゆるんだり、部品が摩耗したりということがおこります。健診で定期的に調整を受けていれば特別な問題はおきませんが、健診を受けず放置しているとインプラントの劣化が早くなってしまいます

また、上部の人工歯は非常に硬く優れた耐久性を持ちますが、強い衝撃がかかると亀裂が入ったり、軽く欠けたりすることがあります。健診で見つけられれば修理ができますが、異変に気付かないまま使い続けていると、劣化が早まってしまいます。

インプラントは精密なつくりの分、普通の被せもの以上にメンテナンスを心がける必要があるのです。メンテナンスを続けながら使えば10年以上持つことがめずらしくありません。せっかくの高価なインプラントですから、お手入れしながら大切に使いたいですね。

インプラント周囲炎がおこる

インプラントの周囲にも、天然の歯と同じように歯周病がおこります。すき間ができやすい分だけプラークがたまりやすく、インプラント周辺におこった歯周病はインプラント周囲炎と呼ばれます。

インプラント周囲炎が進行すると、インプラントを支える骨や歯肉が炎症で破壊され、最悪はインプラントがぐらぐらして抜け落ちてしまいます。その面でも、インプラントと天然の歯には違いがありません。
そして、インプラント周囲が不衛生になれば、他の歯にも悪影響を与え、残っている歯の方まで被害が広がってしまうこともあります。

それを防ぐためには、定期的な健診・クリーニングと、日々の正しい歯磨きの積み重ねが一番大切です。それをきちんと続ければ、インプラントも残りの歯も長持ちし、良い口内環境を保つことができます

噛み合わせに影響が出る

インプラントのネジがゆるんだり摩耗したままで使っていると、全体の噛み合わせに影響してくることがあります。反対に、インプラントはしっかりしていても、周囲の歯や顎の状態が変化したために噛み合わせがズレてくることもあります。

インプラントは人工物ですが、周囲の骨や残っている歯は年齢や健康状態とともに変化していきます。最初に埋めたときの状態がずっと維持できるわけではないので、定期的にチェックし、必要なら調整を行うことが大切なのです。

インプラントのメンテナンスと生活習慣

歯科医院での検診・クリーニングと、毎日の正しい歯磨き。この2つがインプラントのメンテナンスの基本ですが、より良い状態を保つためには生活習慣の心がけなども関わります。

無茶な使い方をしない

インプラントをすると、噛む力が回復します。ですので、普通通りにお食事を楽しんでいただいて大丈夫なのですが、氷など極端に硬いものをかみ砕いたり、無茶な使い方をするのは避けましょう

インプラントには、噛んだときの感覚を脳に伝え衝撃をやわらげる歯根膜が存在していません。そのため、かなり硬いものも強く噛みしめてしまいがちなので注意しましょう。

禁煙をする

インプラント手術に際しては、禁煙を指示された方もいるかと思います。しかし、インプラント手術が終わって安定してくると、再び喫煙習慣が戻ってしまう人も少なくはありません。

喫煙は口内の血流を妨げ、歯肉や組織を弱くすると指摘されています。また、免疫力が低下し歯周病になりやすくなったり、ヤニの付着でインプラント周囲が不潔になりやすくなったりと、インプラントや口内環境にとって良いことは1つもありません。

インプラントをきっかけに禁煙に成功された方は、それ以前より口内環境や全身の健康状態が良くなることが多いです。せっかく高い費用と時間をかけて入れたインプラントを長持ちさせるためにも、残った歯や骨を守り美しい口元を維持するためにも、全身の健康対策のためにも、禁煙の継続をおススメします。

インプラントのメンテナンスは継続が大切

インプラントは人工物ですので、定期的な健診と調整が必要です。反対に、骨に埋まっている部分は天然の歯と同じで、歯周病や感染症の影響を受けます。インプラントをより良い状態で保つためには、メンテナンスは一生を通じて継続していくことが大切です。

結果的にはそれが、口内環境全体の改善や、全身の健康を支えるための大切な習慣となってくれることと思います。