2018年08月28日
一般歯科

どうして虫歯になるの?

どうして虫歯になるの?

虫歯とはどういう状態なのか

人間の口の中には、常に虫歯菌が存在しています。虫歯菌の住み処は、歯の表面を覆っているバイオフィルム。これは細菌のコロニーで、お風呂や台所のぬめりと同じものです。

食事をすると、虫歯菌は口の中に残った食べ物のかすから栄養を得て、酸を出します。その酸によって歯が溶かされてしまう現象を、虫歯と呼んでいるのです。

虫歯を防ぐためには、口の中を清潔にしておくのが一番。虫歯菌に栄養を与えなければ、虫歯になることはありません。

正確に言うと、歯はつねに酸によって傷つけられているのですが、口の中の再石灰化作用によって、細かい傷は修復されていきます。つまり、虫歯菌が歯を傷つける速度に修復が追いつかなくなった状態が、虫歯なのです。

さまざまな虫歯の原因

歯科医院でブラッシング指導を受けて、毎日しっかり歯を磨いていても、虫歯になってしまうことがあります。反対に、まったく歯を磨かなくても、虫歯に縁のない人も。

じつは虫歯菌が活躍するためには、いくつかの条件が必要になります。その条件が組み合わさって満たされてしまうと虫歯になります。ですから、虫歯になりやすいかどうかは、かなりの個人差があります。

では、虫歯菌が活躍するための条件とは、何なのでしょうか。

口の中が汚れている
口の中に虫歯菌の栄養素となる食べかすなどが溜まっていると、虫歯菌の出す酸の量も増えます。

甘いものをよく食べる
糖分は、虫歯菌が酸を作りやすい食べ物です。甘いものを食べたときは、虫歯菌の出す酸の量も増えます。

歯の質が弱い
歯の表面を覆っているエナメル質の強度が弱いと、虫歯菌の出す酸に溶かされやすくなります。

唾液の量が少ない
唾液はアルカリ性で、虫歯菌の出す酸を中和する作用があります。唾液の量が少ないと、虫歯菌の出す酸を中和しきれなくなります。

唾液の作用が弱い
唾液はアルカリ性ですが、どれだけアルカリ性が強いかは人によって異なります。唾液の働きが弱いと、それだけ大量に唾液を出さなければ、酸を中和できません。

虫歯菌が多い
口の中に棲んでいる虫歯菌の数が多いと、それだけ排出する酸の量も多くなります。

効果的な虫歯予防

虫歯を防ぐためには、ただやみくもに歯磨きをしているだけでは不十分です。自分の口の中がどんな状態なのか、性質をよく知って、それに合わせた対策をとってこそ、効果的に虫歯を予防できるのです。

歯科医院で行われている唾液検査を受けると、自分の口の中の状態を知ることができます。合わせて、虫歯予防のアドバイスもしてもらえるので、虫歯になる前に一度受診してみてはいかがでしょうか。

虫歯は予防が一番大切

最近の歯科医院は、「虫歯になってから行く」より、「虫歯や歯周病にならないように行く」という予防歯科を重視するところが多くなっています。もちろん、虫歯になってしまえばしっかりとした治療をしますが、虫歯にはならないのが一番ですよね。
「虫歯になってもいないのに歯科医院に行く必要があるの?」と思われる方もいるかもしれませんが、虫歯というのは無自覚のままで進行していることもあるのです。

一般的には、虫歯になれば歯に穴が開いたり、冷たいものがしみるようになったりすると考えられています。けれど、実はそれはすでに「虫歯が進行している状態」です。本当に初期の虫歯は穴も開かず、しみたりもしません。
その状態で発見することができれば、多くの方が苦手な歯を削ることなく、治療が可能です。もし削らなくてはいけない場合でも、削る範囲はわずかでほとんど痛みも感じずに済みます。型取りをして金属を補う必要もなく、健康保険内の白い材料をその場で詰めて1回で治療を終えられます。

しかし、これが進行した虫歯となれば、削る範囲は大きくなり、場合によっては麻酔が必要になります。削った後は型を取り、詰め物や被せ物を作ってから補わなくてはいけません。根っこの方までダメになっていたら、治療にはさらに回数や時間がかかります。最近は健康保険で白い素材が使える範囲が増えましたが、場所や状態によっては銀歯になり、美しく機能性の良いセラミック治療を希望するなら健康保険は使えません。

つまり、虫歯はいかに予防できるか、早期に発見できるかによって、後の治療での負担も大きく違ってくるのです。それに、現在の医学では進行した虫歯を元の状態に回復させることはできず、病巣を取り除いて人工物で形を復元することになります。セラミックなどは優れた素材ですが、やはり自分自身の健康な歯には敵いません。そのため、虫歯は予防・早期発見が一番の治療法なのです。

虫歯リスクを減らすために

虫歯予防のために意識できることは色々とありますが、上でもお伝えした通り、まずは「自分の口の中の状態を知る」ことが効果的な予防を行うポイントです。

例えば、歯磨き。「食後はすぐに磨いた方がいい」「食後から30分置いて磨いた方がいい」「毎食後磨く方がいい」「夜にしっかり磨けばそれで十分」「磨き過ぎはかえって良くない」…など、色んなことが言われています。どれが正しいの?と悩んでしまいますよね。最近は市販でも山のようなオーラルケア製品が並び、どれを選ぶのが一番効果的かと迷うことも少なくないのではないでしょうか。

でも、正解は人によって違うのです。歯質が丈夫か弱いか、唾液のアルカリ性が強いか量は多いか少ないか、歯並びの状態はどうかなど、細かな要素によって適したお手入れの方法は違ってきます。
自己判断で色んな情報だけを頼りにセルフケアを行っていると、せっかくの努力が実は自分にとって逆効果だった!なんていう残念な結果にもなりかねません。セルフケアの方向性が自分の口の状態と合っていなければ、高価なオーラルケア製品を買い、毎日一生懸命歯を磨いていたのに虫歯になってしまうことだってあり得るのです。

効果的に虫歯を防ぐためには、予防歯科を重視した歯科医院で定期的な健診やクリーニングを受け、自分の口の中の状態を知り、適切なお手入れ方法をアドバイスしてもらうことをおススメします。
せっかく「虫歯を予防したい」という気持ちがあるのなら、自分に合った方法で取り組めることが一番と思います。

地道なお手入れを継続する

自分の口の中の状態がわかり、お手入れ方法の指針がついたら、あとはそれを地道に継続することが大切です。アドバイスに沿って自宅での歯磨きを毎日行うとともに、3~6ヶ月に1回は定期検診とクリーニングを続けていきましょう。

なぜ定期的に通うことがすすめられるかというと、自宅での歯磨きだけではどうしても防げない部分があるからです。

虫歯菌はネバネバとしたバイオフィルムに守られています。そのネバネバは台所のシンクやお風呂場のヌメヌメと同じようなつくりです。高温多湿な場所で食べかすや垢などの栄養源があると、細菌たちはすぐにバイオフィルムをつくって繁殖をくり返すのですが、人間の口の中も細菌たちには絶好の環境です。
バイオフィルム形成前の汚れは歯磨きで落とすことができますが、磨き残しがあってバイオフィルムが強化されてくると、歯磨きでは落とすことができなくなります。

自分で掃除をしている方は分かると思うのですが、台所やお風呂は毎日頑張って掃除しても、すぐにヌメヌメとします。じきに嫌な臭いがしたり、毎日洗っているはずなのにヌメヌメや汚れがこびりついて取れなくなったり…。細菌の繁殖力というのはあなどれません。

お口の中でもそれと似たようなことがおこるのです。毎日歯を磨きフロスや歯間ブラシを使っても、細かなすき間などにはどうしても汚れが残ってしまい、その周辺からバイオフィルムは広がっていきます。小さな磨き残しの積み重ねが、虫歯になりやすい環境をつくりあげていくのです。

歯科医院での定期検診やクリーニングは、プロの点検や大掃除みたいなものです。歯磨きでは取り除けない汚れを取り、口の中に何らかの問題が見つかれば早い段階で処置をして進行を防ぎます。
どれだけ頑張ってお手入れを続けても、残念ながら体質的に虫歯になりやすい方もいますが、定期的に点検を受けておけば早期発見が可能です。

虫歯予防の主役は患者さん自身ですが、より効果的なセルフケアのできる環境をサポートするのが予防歯科の役目です。

虫歯への危険信号…こんな症状はありませんか?

口の中の詳しい状態は歯科医院で検査しなければわかりませんが、今の自分の口の中の虫歯危険度を簡単にチェックしてみましょう。

歯を舌で触るとザラザラ・ヌルヌルしている

綺麗に磨かれ、エナメル質が健康な歯は表面がツルツルしています。歯磨き後なのに表面がザラザラしていたり、ヌルヌルしていたりしていたら、歯磨き法が間違っていたり、歯に何らかの問題がおこっていたりする可能性があります。

ヌルヌルしているときは、歯の汚れが十分に取れていない状態です。バイオフィルムが頑固になってくると、歯磨きだけでは取り切れなくなります。まだやわらかい歯垢の段階でも、適当に磨くだけでは落としきれていないことも多いです。自分の口の中の状態に合わせた歯ブラシ選びやブラッシング法を身に着けることが大切です。

ザラザラしているときは、表面に汚れや歯石がついているか、反対に強くゴシゴシ磨き過ぎてエナメル質の表面が傷ついてしまっていることもあります。自分では判断がしにくいので、気になるときは歯科医院で相談しましょう。

口臭が気になる

多くの方が気にされる「口臭」ですが、これも虫歯や歯周病の前触れ・進行を示す1つの症状のことがあります。まだ虫歯にはなっていなくても、細かな部分に食べかすなどが詰まってしまい、嫌な臭いを発生させていることもあります。昔の虫歯治療の詰め物や被せ物の中が二次感染して臭う場合もあります。

それ以外の原因で口臭がおこることもありますが、まずは口の汚れをしっかり落とし、虫歯や歯周病の治療をしてみないと何が原因の口臭かがよくわかりません。

虫歯予防のために自分の口の中の状態を知り、適切なお手入れをすることは、虫歯より症状が出にくい厄介な歯周病や、気になる口臭や歯の着色を防ぐことにもつながります。予防歯科を上手く活用して効果的なお口のお手入れを続けていきましょう。