2018年09月04日
一般歯科

噛み合わせが悪いと起こること

噛み合わせが悪いと起こること

毎日夕方になると肩こりがつらい、ちょっと疲れると頭痛がしてくる、といったことはありませんか? もしかしたらそれは、歯の噛み合わせが原因かもしれません。じつは噛み合わせが悪いことで、口の中だけでなく全身に影響が出ることもあるのです。

良い噛み合わせとは

上下左右の歯が均等に並んでいる状態を、良い噛み合わせと言います。ものを噛んだ時には全体にバランスよく力がかかるので、顎や顔の筋肉に余分な負担がかかることがありません。反対に、歯並びが悪いと噛み合わせも悪くなります。

噛み合わせは、年齢によっても変化します。歯が次第にすり減ってきたり、年をとって噛む力が衰えたりといったことで起こる噛み合わせの変化は、誰にでも起こることでそれほど問題はありません。

しかし、歯の治療や抜歯によって急に噛み合わせ変わると、体にさまざまな悪影響を及ぼすのです。噛み合わせが悪い状態を、歯科では「不正咬合」と呼びます。

厚生労働省の調査によると、噛み合わせに問題がある人の割合は約50%。そのうちの5人に1人が、矯正治療が必要なレベルの不正咬合だと言われています。

噛み合わせによるさまざまな影響

口の中での問題
噛み合わせが悪いと、ものを噛んだときに一部の歯だけに余分な力がかかってしまいます。その状態が続くと、常に負担がかかっている部分に歯周病が起きやすくなります。
また、ほかの歯とふれあわない部分があると、そこに食べかすや汚れが溜まって、虫歯になりやすいというリスクもあります。

顔や頭部の問題
噛み合わせが悪いと、食事の時も片側の歯だけで噛んでいる状態になってしまいがち。すると顔の筋肉も、常に使っている方だけが発達してきて、次第に顔がゆがんでしまいます。
また、顎の関節も常に片側だけに負担がかかるので、顎関節症になるリスクも高まります。
顎の関節は、頭の横を通る側頭筋に直結しているため、噛み合わせが悪いと側頭筋にもむだな緊張を強いることに。すると、その影響が頭痛となって現れることがあります。

体全体への影響
もの噛むためには顔の筋肉だけでなく、首や肩を覆っている広頸筋も使われています。噛み合わせが悪いと広頸筋にも負担がかかり、肩こりとなって現れることも。
さらに、噛み合わせが悪いことで頚椎にねじれが起こり、中を通っている自律神経に影響することがあります。自律神経は内臓などの働きを調整する役目をもっているので、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、不眠、食欲不振、だるさなど、体に全体にさまざまな影響が出てしまうことにもなりかねません。

噛み合わせは、歯科医院で治療することができます。なにか気になることがあったら、歯科医師に相談してみましょう。

噛み合わせが悪くなる原因

内臓の不調や頭痛など、一見口の問題とは関係のなさそうな所に影響を与えることがある噛み合わせ。そんな大切な噛み合わせがなぜ悪くなってしまうのでしょうか?子どもの頃からずっと歯並びや噛み合わせが悪かったという人ももちろんいますが、元々はそれなりに整った歯並びだったのに、いつの間にかガタガタしてきたという方もいるのではないでしょうか?

噛み合わせの悪さには、生まれつきの要素と後の生活からおこる要素の両方が関わります。

遺伝的な原因

顎の大きさや角度、歯の生え方・形などには、遺伝的な原因が関わります。ただ、物の噛み方・食生活・呼吸法・指しゃぶりのクセなど様々な要因によって顎の成長や歯の状態が変わってくることがありますので、遺伝以上に成長期の習慣によるものが関わっていることもあるようです。
そのため、矯正治療は子どものうちから始める方がやりやすいですが、現在は矯正の技術が進化したので大人の方の矯正もできるようになりました。

口のトラブルを放置していた

大人になってから噛み合わせが悪くなってきたという人は、口のトラブルを放置していた場合も多いようです。
例えば、虫歯や歯周病を悪化させ、歯が失われてしまったとき。そのまま適切な処置をしないでいると、開いたスペースに両横の歯が移動したり傾いたり、噛みあう相手の歯が伸びてしまったりすることがあります。
噛み合わせは全体の歯がきちんとそろってこそ成り立ちます。良い噛み合わせを維持するためには、口のトラブルは早めに対処することが大切です。

治療後の被せ物や入れ歯が合っていない

せっかく治療しても、残念ながらそれが上手く合っておらず、噛み合わせに不具合が生じるというケースも見られます。
ブリッジや入れ歯は元の歯ほどの噛む力は回復できませんが、きちんと合っていれば良い噛み合わせを保つことが可能です。さらに良い噛み合わせを求める場合は、インプラントの選択肢もあります。根っこの残った被せ物であれば、被せ物の高さや形を変えるだけでも噛み合わせの状態が良くなることもあります。
治療後の噛み合わせが気になるときは、歯科医院で合っているかを確認してもらいましょう。

姿勢が悪い

上でご紹介した通り、物を噛むときには頭部や首の筋肉なども使われています。そのために噛み合わせの悪さが首肩のコリや頭痛につながったりもするのですが、反対に姿勢の悪さが噛み合わせの方に影響することもあります。
ひじ枕をしてテレビを見ながらお菓子をむしゃむしゃ…。そんな習慣がある方はとくに注意です。不安定な姿勢で物を噛むと本来とは違った力が歯や顎にかかり、少しずつ噛み合わせがズレてしまう可能性があります。

噛み合わせのチェック

「噛み合わせが悪い」と言っても、そのことを自覚していない人も少なくはありません。噛み合わせが歪んだままずっと生活しているとそれに慣れてしまい、噛み合わせが悪い状態が普通になってしまうのです。
実際の噛み合わせの状態は歯科医院で検査してみなければわかりませんが、自分の噛み合わせを簡単にチェックしてみましょう。

歯並びが悪い

「歯並びが悪い」と「噛み合わせが悪い」は、似た言葉ですがイコールではありません。見た目の歯並びが綺麗でも奥歯の噛み合わせが上手くいっていないこともあります。しかし、見た目に歯並びが悪いと感じるなら、噛み合わせも悪いと考えることができます。

顎の筋肉の付き方が違う

左右の顎を見たときに、目に見えて筋肉の付き方が違うなんてことはありませんか?右腕と左腕の太さが異なるように、片方ばかりで噛んでいると顎の筋肉の付き方が変化してきます。
すぐ顎が疲れる
「よく噛んで食べるのは消化にも脳の活性化にも良い」と言われます。しかし、最近は若い人でも噛むと顎が疲れるという人がいます。子どもの頃からあまりよく噛んでいない人は顎が狭い場合も多く、歯並びが乱れがちです。また、大人になってから他の原因で噛み合わせが悪くなり、顎に過度な負担がかかって疲れてしまうこともあるようです。
よく噛むことはたしかに大切なことですが、噛み合わせが悪いままで無理に噛み続けていると、かえって負担がかかって状態が悪化してしまうことがあります。
しっかり噛めるのは、良い噛み合わせがあってこそのものです。

口元が歪んで見える

噛み合わせの悪さは顎だけでなく、口元全体のバランスにも影響します。噛み合わせが偏ったままにしておくと、口元が歪んで見えたり、片方だけが下がっていたりすることがあります。鼻から口元にかけて伸びるほうれい線の深さが違う場合もあります。
首こりや肩こりがひどい
こりの原因は様々な要素が重なっておこりますが、首や肩のこりは、顔周辺の疲労が関わっていることが少なくありません。目の疲れ・噛み合わせの悪さなどで首や肩がこりやすくなる人も多いようです。

噛み合わせが良くなると?

噛み合わせが悪いと様々なことに影響しますが、反対に噛み合わせが良くなると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

美味しく物が食べられ消化が良くなる

口は第一の消化器官です。胃腸に入る前に食べ物を細かく砕き、消化酵素の入った唾液と混ぜて胃腸の消化活動を助けます。しっかり噛むことで食べ物の美味しさもよく味わえます。その刺激が脳に伝わり消化は促進され、満腹感も得られるので食べ過ぎも防ぎやすくなります。

歯並びに自信が持てる

噛み合わせは機能的な問題はもちろんですが、外見上のがたつきを気にされる方も少なくはありません。矯正される方の多くは見た目の良さを求めて治療に踏み出すようです。スッキリと揃った歯並びになると自分の歯並びに自信が持て、表情や性格までが明るく変化してくる人もいます。
口元が若々しくなる
噛み合わせが整いしっかり噛めるようになると、口元のバランスも良くなり口元が引き締まって見えます。

噛み合わせの治療とは?

歯科医院での噛み合わせの治療は状態によって様々です。まずは、どのような原因で噛み合わせが悪くなっているのか、具体的に何が問題になっているかを十分に確認することが大切です。
治療後の不具合や歯のトラブルの放置で悪くなっている場合は、詰め物や入れ歯を変えることで改善されます。元々の歯並びや顎の状態なども関わって噛み合わせも歯並びも悪くなってしまっている場合には、矯正治療が検討されます。
いずれにしても重要なのは、治療法を決定するまでに口の中全体の状態を検査し、どのような方法が一番いいかを十分に考慮することです。とくに、矯正治療は方法も様々で時間や費用もかかるので、検査、治療計画、治療期間、治療費、メリット・デメリットなどの説明をしっかり受け、患者さん自身が納得の上選択することが望まれます。

噛み合わせの治療はオーダーメイド

歯・顎・骨などの状態は人それぞれです。噛み合わせが悪くなっている原因もひとりひとり異なり、良い噛み合わせの答えも患者さんによって違います。多少機能が落ちてもいいから見た目の良さを一番に重視してほしいという人もいれば、奥歯がしっかり噛みあうことを重視したいという人もいます。もちろん、その両立が叶うように最善の方法を考えますが、状態や費用によってはやはり限界もあります。
噛み合わせの治療で重要なのは、患者さんの希望をよく聞き、状態を調べ、可能な範囲でできる方法について十分に説明することと考えます。
噛み合わせの治療はオーダーメイドの治療です。検討するときはカウンセリングのしっかりとした歯科医院を選ぶと良いでしょう。