2018年10月23日
歯周病

どうして歯周病になるの?

どうして歯周病になるの?

歯周病とは、細菌が感染することで引き起こされる感染症です。細菌の感染によって炎症が起こり、歯を支えている歯肉や歯槽骨が、次第に破壊されていく病気です。でも、どうしてそんな症状が起こるのでしょうか。

歯周病の原因

口の中には常時、約500種類にも上る細菌が棲みついています。この細菌は、普段はそれほど体に悪影響を与えることはありません。
でも、口の中に食べかすなどの栄養素が溜まっていると、細菌はそれを摂取して「歯垢(プラーク)」と呼ばれる物質を作り出します。歯垢は非常にネバネバしているので、歯の表面や歯肉にくっつくと、うがいをした程度では洗い流せなくなります。
歯垢の中は、細菌が非常に繁殖しやすくなっています。一説によると、1mgの歯垢の中に10億個もの細菌が棲みついているとも言われています。その繁殖した細菌が、虫歯や歯周病を引き起こすのです。

歯周病で起こる悪循環

歯と歯肉の境目は、「歯周ポケット(歯肉溝)」と呼ばれる袋状になっています。
歯磨きなどのクリーニングが行き届かないと、歯垢が歯周ポケットに溜まってしまいます。すると、歯垢に棲みついている細菌によって、歯肉の炎症が起きるのです。これが歯周病の始まりです。
歯周ポケットの深さは、健康な人なら2mm以内。しかし歯肉の炎症が起きると、歯周ポケットは次第に深くなっていきます。すると、さらに歯垢が溜まりやすくなるという悪循環に陥ってしまいます。
歯垢をクリーニングしないでいると、石灰化して歯石になります。こうなると歯ブラシでこすったくらいでは落ちないので、歯科医院に行ってクリーニングしてもらう必要があります。

歯周病が悪化すると

歯周病の初期症状は、「歯肉炎」と呼ばれる歯肉の炎症だけで、痛みなどを感じることはありません。そのため発見が遅れて、気づかないうちに症状が進んでしまうことも多いのです。
歯周病が進行すると、炎症は歯肉から歯槽骨に広がります。歯肉の中に膿が溜まって、血とともに流れ出すこともあります。その症状から、以前は「歯槽膿漏」と呼ばれていました。
さらに悪化すると、細菌によって歯槽骨が溶かされ、歯がグラグラするようになってしまいます。ここまでくると、治療も非常に難しくなります。

歯周病の治療法

歯周病の治療法は、とにかく口の中を清潔にすること。歯垢や歯石がなくなれば細菌も繁殖できなくなり、炎症は治まります。
毎日きちんとブラッシングしていても、取り切れない汚れは溜まってしまうもの。できれば定期的に歯科医院でのクリーニングを行って、歯周病を予防したいものです。

歯科医院でのクリーニングとは?

歯科医院でのクリーニングは、歯科衛生士さんが専用の機械を使って行います。歯医者での治療が苦手、歯科医が苦手という人でも、クリーニングだけは気持ちがいいので通うのが楽しいという声も聞かれます。
「治療」というより美容院でやってもらうヘッドスパのように、専門の人に普段は使わない機械ですみずみまで洗ってもらう…そんな感覚もありますが、もちろん医療行為なので個人の状態をきちんと調べた上で、効果的な方法を選択していきます。具体的にはどういうことをするのでしょうか?

口の中の状態をチェックする
クリーニングの第一歩は、口の中をすみずみまでチェックすることです。歯肉の炎症、歯周ポケットの深さ、磨き残しの多い場所などを調べ、効果的な歯周病予防・改善を行うための計画を立てます。
どんなことでも、まずは自分の状態を知らなければ対策も上手くいきません。
最近は歯周病に関する情報や対策グッズも大量に出回っていますが、自分の状態を知らないままでは情報に振り回され、せっかく頑張っても逆効果…なんて悲しい結果になることも。
一口に歯周病予防と言っても、口の中の状態は個人差が非常に大きいものです。
まずは口の中を調べ、予防や改善のために自分がやるべきことが何なのかを知りましょう。
それが効果的な歯周病予防に欠かせないポイントになります。

歯に付いた汚れをすみずみまで掃除する
口の中の状態がわかった後は、歯についた汚れを専用の器具や機械を使ってすみずみまで掃除していきます。
毎日歯磨きを頑張っている人でも、やはり届かない場所があるので部分的に歯垢がたまってこびりついています。
とくに、歯並びのガタついている場所がある人、歯肉が下がって歯間が開いている人、顎の狭い人などは磨き残しも多くなりやすいです。
普段、自分で鏡を使ってチェックしても、奥や裏の方の汚れはなかなか見ることができません。
歯科医院でのクリーニングでは、そんな取り切れない細かな汚れも医療用の機械でしっかりと取り除いていきます。

表面を磨く
細かな汚れが取れた後は、専用のペーストとブラシを使って歯の表面を磨きます。磨くことでヤニや茶渋の汚れもとることができ、表面がツルツルになった歯には汚れが付着しにくくなります。
最後の仕上げとして、歯質を強化するフッ素配合の薬剤を塗ることもあります。フッ素配合の薬剤は虫歯予防のために有効です。
クリーニングが終わった後には、口の中がいつもよりスッキリとしているのを実感できるでしょう。クリーニングで綺麗になった状態をできるだけ維持するためには、自宅での歯磨きをしっかりとすることが大切です。
歯科医院では状態に合わせたブラッシング指導や生活習慣のアドバイスも受けられるので、セルフケアのモチベーションも高まります。

プラークと歯周病の関係

歯周病の発生や悪化にプラークが深く関係することは、これまでの研究によって示されてきました。
未だに解明されていない部分もあるのですが、プラークが多くの歯周病に関連していることは間違いがないと考えられています。
歯周病の原因については、プラーク以外に遺伝要素、免疫力、唾液の質や量、喫煙、ホルモン、全身の病気などの要素も関わると言われていますが、いずれにしてもプラークが悪化要因になることに変わりはありません。
プラークは歯周病だけでなく、虫歯や口臭の主な原因にもなります。

プラークを放置していると…?
歯磨きだけでは取り切れないプラークを放置しておくとどうなるのでしょうか?
プラークは一般的には歯垢と呼ばれますが、上でもご紹介した通り単なる食べかす汚れとではありません。
最初は食べかすだったものに強力な膜をつくる性質の細菌が繁殖し、周囲をバリアとなる膜で覆ってしっかりと歯に付着します。
そして、その膜の中に次々と他の細菌を呼び込み、無数の細菌群によるコロニーが歯の周辺につくられていきます。この膜はバイオフィルムと呼ばれ、お風呂場や台所のヌメりと似た性質のもの。
非常に強力で抗菌剤もはね返してしまう威力があります。そんな強力な膜の中で、歯周病や虫歯の原因菌たちが繁殖し、気づかないうちに歯周病や虫歯が進行してしまうのです。

歯科医院でのクリーニングは口の大掃除
プラークは初期の段階では歯磨きのブラッシングで落とすことができます。
そのため、歯周病予防には、自分の状態に合った毎日の正しい歯磨きが欠かせませんが、1人ではやはり限界があります。
台所やお風呂場もときに大掃除しなければだんだん不潔になってしまうのと同じです。
歯科医院でのクリーニングは口の大掃除。毎日の歯磨きと半年に一度くらいの定期クリーニングで清潔な口内環境を保ち、歯周病を予防しましょう!それは同時に虫歯予防や口臭予防にもつながります。

歯周病の恐ろしさ

歯周病は虫歯と異なり、進行するまで目立つ症状が無く、歯肉炎で血が出るようになっても痛みは感じません。
そのため、「歯磨きしたら血が出るな」と思いながら放置している人も少なくないのではでしょうか。
けれど、最初は歯肉だけだった炎症は、じきに奥の組織へと進み、歯を支えている歯根膜や骨にまで破壊がおこるようになります。
それでも痛みというのは感じないため、そのまましていて気が付けば歯がグラグラ?物が噛みづらい?ということになり、最悪虫歯にもなっていない歯がポロっと抜け落ちてしまうことも。
昔はそのメカニズムがよくわかっていなかったため、年齢とともに歯が抜けるのは老化現象で止むを得ないことと考えられていました。
しかしその後の研究で歯周病がある菌種による感染症とわかり、予防・改善にはプラーク除去が効果的なことも具体的な結果によって示されてきたのです。

歯周病は不治の病から予防可能な病へ

2001年、歯周病はギネスブックに「全世界でもっとも蔓延している病気」として登録されました。
それくらい人類共通とも言える身近な病気なのですが、定期的なクリーニングや検診を受ける習慣があり、普段の歯磨きへの意識の高い国ほど、歯周病によって歯を失う率は確実に下がってきています。
日本でも、80歳までに20本の歯を残す8020運動が盛んになり、正しい歯磨きや定期検診を意識する人が増えた結果、1999年には15.3%だった達成率が2016年には50%を超え、51.2%という数字になりました。
この結果を見ると、歯周病で歯を失うことは予防できるということがわかります。
昔は不治の病と言われた歯周病。遺伝などの要因が関わることもあるので残念ながら予防しきれない歯周病もあるのですが、多くの歯周病はプラークコントロールによって予防することができます。

歯周病予防は心身を健康に保つ習慣の1つ

歯周病は、糖尿病や心血管疾患、免疫疾患などの悪化因子になる可能性も指摘されていますが、それだけではなく、しっかり噛んで食べられる歯や健康な口内環境が全身の健康に大きな影響を与えることは確かです。
健康な歯や清潔な口内環境を保つことは、心身の健康にとって大きな支えとなります。
歯周病は目立つ症状が見えないため、初期の段階で予防に取り組もうとしてもなかなかその気になれないという人も多いかもしれませんが、クリーニングを受けてスッキリとした口の中は単純に心地よく、そこから歯磨きや食生活改善へのモチベーションが高まることも。歯周病予防のための正しい歯磨きや定期クリーニングの習慣は、心身を健康に保つための習慣にもつながります。
健康な日々の中で歳を重ねるためにも、取り入れてみてはいかがでしょうか。