2018年07月17日
インプラント

インプラントの手術

インプラントの手術

インプラントとは

治療のため体内に埋め込まれる器具のことを総称してインプラントといいますが、一般的には歯科インプラントの意味として認知されています。

歯科インプラントとは、何らかの理由により失った歯の代わりに人工歯をはめ込む治療のことで、人口歯は、フィクスチャー、アバットメント、上部構造補綴物(じょうぶこうぞうほてつぶつ)の3つの部位で構成されています。

土台としてネジのような器具であるフィクスチャーを顎に埋め込み、その上にアバットメントと上部構造補綴物を設置。実際に見える部分である上部構造補綴物は、天然の歯に似せて作られています。またフィクスチャーとアバットメントは、チタン製のものが多く使用されています。

インプラントのメリット

・天然の歯と同じ感覚でかめる

頑丈な人工の歯が顎にきっちりと固定されているため、硬い食べ物でも強い力でかむことが可能です。入れ歯のように食物が挟まることによる不快感や痛みがなく、さらには口腔内の衛生を保ちやすいといえます。

・治療期間が短く周囲の健康な歯を削る必要もありません

ブリッジのように失った歯の左右に位置する歯を削る必要がありません。インプラントであれば他の健康の歯への負担がないうえ、見た目が天然の歯とほぼ同じです。

インプラントのデメリット

・費用が高額になりがちで、健康状態によっては治療を受けられない

インプラントは保険適用外のため費用がどうしても高額になってしまいます。またインプラントを埋め込む顎の骨が弱いと治療ができず、持病のため薬を使っている人にも向いていません。

・治療後はしっかりとした管理が必要

インプラント維持のため、口腔内衛生を保ちさらには定期的な検診が必要になります。

インプラントの流れ

STEP1(カウンセリング)
まずは埋め込むインプラントの数や太さ、治療方法、予算などを担当医と相談します。

STEP2(一次手術)
インプラントの手術は二度に分けて行われます。一時手術では、歯茎を切開して歯の土台になる部分のフィクスチャーを顎の骨に埋め込みます。二度にわたる手術は麻酔が効いていますので痛みはほとんどありません。

STEP3(治癒期間)
フィクスチャーと顎の骨が結合させるため3~6ヶ月の治癒期間が必要あります。結合が不十分だとインプラントの脱落の原因になるのです。また治癒期間は仮の歯を使用できる場合もあります。

STEP4(二次手術)
フィクスチャーと上部構造補綴物の連結部分となるアパットメントを設置。上部構造補綴物の設置については、手術のため切開した歯茎が回復するまで1~6週間待たなければなりません。

STEP5(上部構造補綴物設置)
上部構造補綴物を設置して治療は完了となります。

インプラント手術にかかる時間

インプラント手術の流れを見ると、ずいぶん長い時間がかかるように感じるかもしれませんが、インプラント1本を入れる手術は、規模としては親知らずの抜歯と同じ程度です。状態によって差がありますが、通常なら1本につき15~20分程度で終了します。

あとはインプラントが骨にしっかり安定するための期間や、傷が回復するのを待つ期間で、手術を行うのは基本的に2回だけです。骨移植や他の歯の調整なども行わなければいけない場合には、もう少し回数や期間が必要になります。

インプラント手術に長い期間が必要な理由

インプラントは、ブリッジや入れ歯とは違い、単なる人工物ではありません。安定したインプラントは骨と結合し、体の一部として働くようになります。現在主流で使われている純チタン製のインプラントは、人間の体との親和性が非常に高いのが特徴です。

しかし、元々は異物ですから、埋めればすぐに骨と結合してくれるわけではありません。初期の安定がその後のインプラントの機能や持ちを大きく左右するため、十分な期間で慎重に安定を確認する必要があるのです。

最近は、より短時間で簡単に行えるインプラント手術の方式も開発されてきていますが、その分リスクが増える一面もあるので、内容や安全性をしっかりと確かめて選択しましょう。

インプラント治療は、他の治療に比べると多くのステップを必要とします。面倒と思われるかもしれませんが、より安全に、快適に長持ちするインプラントに仕上げるためにはどれも重要な過程になります。

事前の検査や確認を十分に行わず安易に治療を進めてしまうと、インプラントの脱落、手術時のトラブルなどにつながってしまう可能性が高まるためです。

インプラント手術の安全性への取り組みは?

インプラント手術は、手術の中では成功率が高いと言われています。しかし、手術である以上ノーリスクというわけにはいきません。できる限り安全性を高めるために、様々な取り組みがされています。

全身の健康状態を確認する

インプラントは手術がともないますので、虫歯治療などより全身的なリスクを考慮しなければいけません。例えば、血圧や心臓に異常のある方、進行した糖尿病、血が止まりにくい方、骨がもろい方、けいれんや失神の可能性がある方(てんかんなど)のある方は、基本的にインプラント手術を行うことができません。

また、飲んでいるお薬の影響やアレルギーの有無によっては、使用する麻酔薬を変更したり、お薬を一時中止しなければいけないこともあります。

そのため、インプラント手術の際には、まず全身の健康状態・病歴・飲んでいる薬・アレルギーの有無・喫煙の有無などの確認が必要になります。患者さんからの情報と、一般的な血液検査などを合わせ、できるだけ安全な手術が行えるように適応を見極めます。
より安全な体制で手術を受けるためにも、全身の健康に関する情報は隠さずに伝えましょう。

立体的に骨の位置関係などを調べる

全身の健康状態の確認で手術が可能と判断されたら、次はお口の中を十分に調べる必要があります。インプラントの手術を安全に行うためには、骨の厚み、質、量に加え、周辺の骨との位置関係、重要な神経や血管の場所などを立体的に検査し、インプラントを挿入しても安全かどうか、可能な角度や深さなどを確認します。

インプラントはただ埋めれば済むというわけでなく、機能や見た目も含めて自分の歯に近い状態に再現する必要がありますので、立体的な検査が行えるCTなどを使い、十分に検査を行うことが手術のリスクを避けるために重要なポイントとなります。

事前に必要な治療を行う

虫歯・歯周病や噛み合わせの問題などがあると、インプラントの手術を安全に行うことができません。とくに、歯周病が原因で歯を失った方の場合は、まずは歯周病のコントロールが良好になることが大切です。

衛生管理を徹底する

インプラント手術のリスクとしては、感染のリスクもあげられます。感染とは、手術した部位に細菌などが入り込み、腫れや膿んだ状態を引き起こしてしまうことです。感染がおこるとインプラントが上手く安定せず、手術をやり直さなければいけないこともあります。

そのようなリスクを避けるため、手術する環境では手袋・術衣・器具などの衛生管理消を徹底して行う必要があります。インプラント手術では大病院のようなオペ室の必要はありませんが、最近はインプラント手術用の厳格な衛生管理をした専用オペ室を備える歯科医院も増えてきています。

手術中に体の変化をチェックする

安全性の高い手術のためには、生体モニターという医療機器を使い、手術中の血圧・血中酸素飽和度・心拍数・脈拍の変化などをチェックしながら行うのが基本になっています。何かの変化があれば術式を変更、休止など適切な対応がしやすいため、より安全な環境で手術が行えます。

専門性の高い歯科医が手術を担当する
歯科治療の中でもインプラントは専門性の高い治療です。しかし、歯科医なら誰でも行うことができてしまうので、実際のインプラント手術を誰が担当するのか、その歯科医はインプラントの専門性が高いのかどうかは確認した方がいいかもしれません。

個人の歯科医院では、インプラント治療だけは専門の歯科医を呼んで行っている場合もありますし、院長が経験豊富で自ら手術を担当している場合もあります。誰が手術を担当するかを確認しておくと、安心して手術が受けやすくなると思います。

信頼性のあるインプラント製品を使用する

一口にインプラントと言っても、非常に多くの種類があります。インプラントの手術では、製品そのものの品質もリスクや成功率を左右します。多くの症例で使われている信頼性の高いインプラント製品を選択することは、安全性を気にされる方には安心感が高いのではないでしょうか。

インプラント手術の痛みへの取り組み

手術と聞くと痛みを心配される方も多いと思いますが、手術には必ず麻酔を使用しますので、手術中に強い痛みを感じることは通常ほとんどありません。基本的には何かが引っ張られる感じや圧迫感などがある程度です。

ただ、麻酔を確実に効かすためには、手術部位の神経や血管などの位置関係を事前にしっかりと調べておくことが大切です。

また、痛みの感じ方というのは、非常に個人差が大きいものです。不安の強い方ほど痛みへ敏感になる傾向があるため、特別に不安のある方は事前に歯科医に伝えておきましょう。十分な説明を受けることで安心感も生まれますし、麻酔方法に配慮することもできます。

希望に合ったインプラント手術を受けるためには?

以上ように、インプラントの手術に対しては様々な取り組みがなされていますが、その内容は歯科医院によっても差があります。手術に不安をお持ちの方は、カウンセリングの際に安全性や痛みへの取り組みについて確認されるといいと思います。

インプラント手術への考え方は、人によって様々です。安全性が高く定番の方法で手術を受けたいと希望される方もいれば、できるだけ最新でスピーディな方式で受けたいと考える方もいます。

そして、歯科医院のインプラント手術への考え方も様々です。症例が多く信頼性の高い方式を選ぶ所もあれば、積極的に新しい製品や方式を取り入れようとする所もあります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、大切なのはご自分の希望と方向性の合った歯科医院を選ぶことかと思います。

そのためには、事前に十分なカウンセリングや検査を受け、可能性のあるリスクやデメリットについても納得された上で治療を選択しましょう。