2017年12月15日
一般歯科

衛生士によるプロの歯ブラシ(ポリッシング)

衛生士によるプロの歯ブラシ(ポリッシング)

毎日の歯磨きを頑張っているはずなのに、「何となく歯がくすんできた?」「あまり綺麗にならなくなってきた気がする」。そんなときってありますよね。

でも、そんなときに歯ブラシでゴシゴシと強くこすってしまうのは避けましょう。時間をかけて少しずつ蓄積してしまった汚れは歯ブラシだけで落とせず、むやみにゴシゴシこするとエナメル質や歯ぐきを傷つけてしまう場合があります。

自宅での歯ブラシだけでは落としきれなくなった汚れには、歯科衛生士によるプロの歯ブラシ(ポリッシング)のケアが力を発揮することがあります。ポリッシングとは、具体的にどのようなことをするのでしょうか?

ポリッシングとは?

歯科でポリッシングというと、歯科衛生士が専用の「ポリッシングブラシ」や「ポリッシャー」などの機械を使って行う歯のお手入れのプロケアの1つです。手磨きでは落とせない頑固な汚れを落とし、歯の表面をツルツルの状態に導きます。

ポリッシングは、英語のpolishingから取った言葉で「磨く」という意味です。歯科だけではなく、工業での研磨や掃除の用語としてや、美容ケアで肌用ブラシを使って肌を磨く場合などにもポリッシングという言葉が使われます。

ポリッシングの種類

ポリッシングは、大きく分けると2つの方法があります。

1つ目は、電動のエンジンハンドピースの先にポリッシングブラシを取り付け、歯の表面に直接ブラシをあてて磨く方法。2つ目は、清掃効果のあるクリーニングパウダーを空気や水の力を利用して歯の表面に吹き付け、表面にこびりついた着色汚れやプラークを除去する方法です。

ブラシを使ったポリッシングの方法

ポリッシングブラシは、一般的な歯ブラシのような形状ではなく、芯をぐるりと取り囲むように全方向に細かな毛がついています。一つのブラシが1本の歯の表面積に収まる程度の小さなブラシです。

歯の状態や部位に合わせて使い分けられるように、柔らかめ・硬め、細め・太め、小さめ、大きめなど、様々な材質や大きさのポリッシングブラシがあります。

これを専用の機械の先につけると高速の回転や振動によって歯の表面を効率的に磨くことができます。

ポリッシングブラシを使う際には、それ用の研磨剤を歯に塗ります。研磨剤といっても歯の表面を削ってしまうようなものではなく、歯に直接ブラシの刺激や摩擦による熱があたらないように防ぎ、歯の表面にこびりついた茶渋やヤニ汚れなどの着色、溜まったプラークなどを効率的に落とすためのものです。

ポリッシングブラシはすべての歯面に適応でき、細かに動かしながら歯の全体を磨きます。先につけるブラシは、その都度交換して使います。

ブラシを使わないポリッシングの方法

ブラシを使わないポリッシングには、空気圧や水圧を利用したものがあります。主に微粒子重曹などの清掃効果のあるクリーニングパウダーを専用の機器にセットしてスイッチを入れると、水や空気とともにクリーニングパウダーが高圧&瞬速で歯の表面に吹き付けられ、そこについている頑固な汚れやプラークを洗い流すことができます。

ポリッシングブラシに比べると短時間で処置ができ、歯の間についた着色汚れや目では見えにくい部分のお手入れには便利ですが、呼吸器に持病のある人などには使用ができません。細かな部分にはかえってブラシの方が届きやすい場合もあり、口内全体のポリッシングには主にポリッシングブラシが用いられることが多いようです。

エアーを使ったポリッシャーには、メーカーによってプロフィージェット、エアーフロー、ジェットポリッシャーなどの種類があります。

ポリッシングが向いているケースとは?

ポリッシングは、主に「自宅の歯磨きでは取り切れない汚れ」を取り除くために有効です。

効果の期待できる汚れとしては、

・タバコのヤニ汚れ
・茶渋
・食べ物の色素の付着汚れ

これらのいわゆる「ステイン」と呼ばれる汚れには、ポリッシングが優れた効果を発揮することが多いようです。

市販の歯磨き粉の中にもステイン対策の研磨成分が入ったものがありますが、ポリッシングほどの作用は無く、あくまで予防の範囲にとどまります。ポリッシングは、市販の歯磨き粉や歯ブラシでは対応できない蓄積した着色汚れをかなりのレベルまで綺麗にすることができます。

歯の黄ばみや汚さが気になってホワイトニングの治療を希望した人でも、ポリッシングだけで意外なほどに歯の色が綺麗になる場合もあります。

また、歯の表面がツルツルに磨かれるので汚れがつきづらくなり、その状態で正しい歯磨きを続けると綺麗な状態をある程度持続させることができます。

ポリッシングが向かないケースは?

ポリッシングブラシは歯の表面や歯ぐきにも振動が伝わります。通常、その刺激は「気持ちいい」と感じる範囲のものなので、その気持ちよさが病みつきになるという人もいるようです。

ですが、歯ぐきがかなり弱って出血しやすくなっていたり、歯ぐきに傷があったり、知覚過敏の症状があったりすると痛みを感じることがあるので、そのような場合はポリッシングブラシの使用が向いていません。

また、エナメル質が極度に薄い、やわらかい、何らかのトラブルがある場合にもポリッシングができないことがあります。

エアーを使ったポリッシングの方は、微粒子のパウダーを使用するため呼吸器に持病のある人には基本的に行うことができません。使用するクリーニングパウダーの種類によっては、ナトリウム制限のある人などに向かないこともあります。

ポリッシングでは落とせない汚れは?

ポリッシングは、歯の表面についたステインやプラークなどをかなり綺麗に落とすことができますが、対応できない汚れもあります。

・プラークが歯石となってこびりついている状態
・歯周ポケットの中の汚れ
・古くなった金属の影響で黒っぽくなっている状態
・元の歯そのものの色が加齢などで黄ばんでいる状態
・薬剤や病気など全身的な影響で歯におこったシミや変色

プラークが石のように硬くなった歯石の状態になると、通常のポリッシングだけでは取り切れず、その場合はスケーラーという専用の器具を使って取り除く必要があります。

また、歯ぐきと歯の間が離れたことによって生まれる歯周ポケット内の汚れには、プロフィーカップと呼ばれる専用部品をポリッシングブラシの代わりにエンジンハンドピースに取り付け、ポケットの内部をお手入れをします。

ポリッシングの前にこれらの処置も行い、歯科衛生士の手によるフロッシング(歯のすき間に専用の糸を通して汚れを絡めとること)なども合わせたトータルのお手入れは、PMTCと呼ばれ、歯周病予防・虫歯予防・口内の清潔さを保つためのプロケアとして、定期的に受けることがすすめられています。

その他の変色に対しては、ホワイトニング治療が有効なケースもありますが、状態によっては対応できないことがあり、その際は表面のコーティングや白い被せ物の選択など、歯科医とよく相談していくことになります。

ポリッシングを受けるには?

歯の着色汚れが気になるという理由や、自分の意志でポリッシングを受けたいという場合には、保険が適応されないために全額自費の治療となります。その価格は医院によって異なり、1本単位で受けられるところから、全体のポリッシングや他のお手入れがセットになった「歯のクリーニング」として設定されているところまで、価格の幅もまちまちです。

自費診療と言ってもホワイトニングの施術よりはずっと安いのが普通なので、気軽に受けられる歯のお手入れとして人気があります。

歯周病や虫歯のリスクがある人がその進行を防ぐ目的で定期的にトータルケアのPMTCを受ける場合には、保険が適応されることがあります。価格はその内容によって様々ですが、数千円程度のところが多いようです。