2017年12月24日
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歯ぎしり予防のマウスピース

歯ぎしり予防のマウスピース

多くの人が夜間(就寝中)無意識に行っているという歯ぎしり。ひどくなってくると歯や全身に様々な悪影響を及ぼす可能性が指摘されていますが、そんな歯ぎしりを予防する1つとして、マウスピースを使用する方法があります。

歯ぎしり予防のマウスピースとは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?
メリットやデメリット、使い方、注意点、素材、価格、市販品との違いなどをまとめてみました。

歯ぎしり予防のマウスピースとは?

「歯ぎしり予防のマウスピース」は、歯ぎしりの習慣によって歯と歯が接触しないように口の中にはめる歯のガードカバーのようなもの。主に自分でコントロールできない就寝中の歯ぎしりを予防するためのアイテムなので、「ナイトガード」と呼ばれることもあります。

ラクビーや格闘技などの選手がカラフルなマウスピースで上の歯をおおっていることがありますが、あれをもっと薄く簡易的にしたようなイメージで、違和感の少ない柔らかな素材で個人個人の歯にフィットするように型を取って作ります。

ただ、歯医者さんの治療の中で、「歯ぎしり予防のマウスピースとは絶対にこれ」という特別に決まった形があるわけではないため、各医院や歯医者さんの考え方によってはその形状が少し異なる場合があり、積極的にマウスピースを取り扱っていない医院もあります。

歯ぎしり予防のマウスピースが適応すると考えられるケース

・歯ぎしりによって歯(人工歯)のすり減りやヒビなどが見られる
・歯ぎしりによる顎や周辺のダルさなどを感じる
・他人に歯ぎしりの音を指摘されて気になっている
・その他、就寝中の歯ぎしりによって何らかのダメージがある

「歯ぎしりを根本的に治療するもの」ではなく「症状を緩和するもの」

歯ぎしり予防のマウスピースは、歯ぎしりの習慣によっておこる歯や周辺組織へのダメージ・歯ぎしりによる音・顎や筋肉への負担・精神的負担などを軽減させる目的のものです。

歯ぎしりの原因には様々な要素が絡んでいるため、根本的な歯ぎしり治療がマウスピースで行えるというわけではありませんが、歯ぎしりによるデメリットを緩和してくれる可能性があります。

マウスピースによって歯ぎしりの苦痛や精神的負担が緩和されたことにより、歯ぎしりそのものが改善されるというケースもあるようです。

素材

多くの場合は歯科用の成型しやすいプラスチックで作ります。透明~半透明の薄く軽い仕上がりになるので、装着してもほとんど目立たちません。

使い方

基本は上の歯列全体にかぶせるような形になりますが、上の歯にマウスピースがハマると気持ちが悪くなる人がいたり、下側にハメた方が効果的と考えられるケースがあったりするので、下の歯列に使う場合もあります。

医院によっては歯列全体をおおわず、一部分の歯にだけハメて使うタイプのマウスピースを作る所もあります。

いずれにしても、使用するのは就寝中です。必ず歯磨き後にはめるようにし、はめた後に水以外のものを飲食しないようにしましょう。起きたら外し、マウスピースは水洗いをして水気をふき取って乾燥させ、汚れたり無くしたりしないようにケースで保管する方が安心です。

汚れや匂いが気になるときには、硬いブラシや歯磨き粉を使うとプラスチックが傷つくことがあるため、食器用の中性洗剤と柔らかなスポンジなどを使います。ただ、素材によっては洗剤の使用が向いていない場合があったり、ブラシでの洗浄が必要なものがあったりもしますので、作った歯医者さんで確認するようにしましょう。

価格

価格はマウスピースの形状や素材により異なりますが、保険適応3割負担の人で平均5,000円程度のところが多いようです。

保険適応されるケースとされないケース

歯ぎしりによる何らかの辛い症状やダメージがあり、保険適応の範囲内の素材で作るなら、基本的に保険は適応されます。

ただ、医院によっては様々な機能性を持たせたマウスピースを扱っていたり、特殊な素材を使ったり、その医院の方針でマウスピースを自費診療としているケースがあったり、そのような場合には保険は適応されず、自費診療となります。自費診療のマウスピースの価格は幅が広く、1万~5万程度のことがあるようです。

マウスピースを作る際には、最初に価格のことも含め、どのようなものになるのかを確認しておきましょう。

歯ぎしり予防のマウスピースのメリット・デメリット

直接的なメリット

・歯ぎしりによる歯のすり減り、割れなどを防ぐ
・歯ぐき、歯の根、骨、歯根膜などへの負担を軽減させる
・被せ物や人工歯を歯ぎしりの圧力から守る
・音が鳴らなくなるので周囲への気がねが無くなる

間接的なメリット

・歯ぎしりが原因の顎や首肩のコリが緩和される可能性がある
・それらが緩和されたことで眠りやすくなることがある
・精神的な安心感が生まれる

デメリット

・必ずすべての歯ぎしりを予防できるわけではない
・マウスピースの違和感に慣れない人もいる
・歯ぎしりの力が強いとマウスピースの方が破損することがある
・マウスピースをハメたことでかえって顎に疲れを感じるケースもある

市販品と歯科で作るマウスピースの違い

ドラッグストアやバラエティショップには、「歯ぎしり対策のマウスピース」として販売されている市販品があります。基本的な目的としては同じで、加熱すると柔らかくなる成型用のプラスチックを使って自分で自分の歯型を取り、それが冷えるとマウスピースの形として固まるような仕組みになっているものが多いようです。

けれど、歯医者さんで型を取るような綿密な仕上がりは無理なのでフィット感に欠け、素材も医療用のものとは異なります。

合わないマウスピースを長時間はめ続けることは歯や顎にあまりいい影響を与えず、また、虫歯、歯周病、歯並び、歯の根や骨の状態、顎の状態などによってはマウスピースの使用自体がかえってデメリットを招くケースもあります。歯ぎしり予防のマウスピースを希望する際には歯医者さんで相談し、きちんと型を取って作った方が安心です。

歯ぎしりとは?

一口に歯ぎしりと言っても、歯の動かし方によって主に3つの種類に分けられます。

① 上下の歯をギリギリと音が鳴るようにすり合わせる(グライディング)
② 上下の歯を左右には動かさずグッと喰いしばる(クレンチング)
③ 上下の歯をカチカチと何度も接触させる(タッピング)

一般的に「歯ぎしり」と聞いて思い浮かべるイメージは、①のギリギリと音が鳴る歯ぎしりではないでしょうか?とくに夜間、同居の人が目を覚ましてしまうほど大きな音の鳴る状態が「歯ぎしり」と思っている方も多いようです。

けれど、意外と多いのが②の音も無くグッと喰いしばるタイプの歯ぎしりで、これだと無自覚のままで歯や周辺に強い負担がかかり続けている可能性があるので注意が必要です。

歯ぎしりの原因

歯ぎしりの原因については諸説ありますが、人によって複数の要因が絡み、皆が同じ原因ではないと考えられています。原因となり得る要素としてあげられているのは、

・精神的ストレス
・口内環境が悪いこと
・顎の位置や全身のバランスが悪いこと
・他の病気や薬剤の影響 など

以前はかみ合わせの悪さや歯並びなどが歯ぎしりの主な原因と考えられていましたが、現在は精神的なストレスとの関連が深いという説が重視されてきています。歯を噛み合わせたりすり合わせたりすることにはストレス軽減の効果があり、実際にストレスホルモンの低下や緊張の緩和などのデータが実験では報告されています。

昼間に強いストレスがかかってそれが蓄積すると、心身の健康にとっては様々な悪影響が及ぶので、就寝中に歯ぎしりをすることでそれを発散させる目的があるのではと言われています。

とはいえ、口内環境や各組織のバランス、他の病気、薬剤の影響によるものなどの要因も見逃すことはできません。口内や顎に何か不具合や痛みがあると、それが引き金になって歯ぎしりの習慣につながったり、歯磨きをせずに寝て口内が酸性の状態のままにあると、歯ぎしりによって唾液の分泌を促し、口内を中性に戻そうとする無意識の力が働くケースもあると指摘されています。

歯ぎしりの治療

歯ぎしりには様々な要因が絡むため、決まった治療法があるわけではなく、その人の歯ぎしりの原因のメインが何かによって治療法は異なります。

精神的なストレスが大きく関わる場合は、環境が変わると歯ぎしりが治るということもあり、一般的な歯医者さんで行える歯ぎしり対策としては、マウスピースの作成や、口内環境を整えるということが中心です。

専門的な歯ぎしり外来などでは、より細かな歯ぎしりの原因をチェックし、緊張を緩める訓練や、歯ぎしりを悪化させると考えられる生活習慣の指導、顎や全身のバランスを整えるアプローチ、漢方薬などを使った治療を行うところもあるようです。

歯ぎしり予防のために

就寝中におこる歯ぎしりによるダメージを軽減させるために、上手く合えばマウスピースは便利なアイテムです。それと同時に、

・眠る直前まで飲食をしない
・自分なりのストレス対策を考える
・眠る前に軽いストレッチや深呼吸などで緊張をとくようにする
・定期的に歯医者さんに通い口内環境を整える

などの習慣が歯ぎしり予防に役立つと言われています。