2018年02月24日
一般歯科

歯が抜けてしまったらどういう治療法があるの? 

歯が抜けてしまったらどういう治療法があるの? 

歯周病や虫歯がひどくなって歯が抜けてしまったとき、そのまま放置しておくと噛み合わせや顎骨全体のバランスが崩れ、他の歯や全身の健康にもいい影響を与えません。もし歯が抜けてしまったとしたら、どういう治療法があるのでしょうか?

健康保険内での治療

歯が抜けてしまったときの治療法は、健康保険内での治療と健康保険外での治療が選べます。健康保険内での治療法は、厚生労働省が定めた材料や方式の範囲内で行う必要があります。治療費の7~9割(加入している保険の種類や年齢で異なる)を保険組合や国が負担してくれるので治療費が比較的安く済みますが、その代わり選べる材料や方式には制限があり、その患者さんにとって必ず最善の方法が尽くせるとは限らないのがデメリットです。

◆ブリッジ

抜けてしまった歯が1~数本程度で、周辺に健康な歯が残っているときに向いている治療法です。抜けてしまった歯の両側に残った歯を利用し、それに支えてもらう形で抜けた歯の部分に人工歯を固定します。抜けた歯の空間に人工歯の橋を架けるようなイメージの治療法なので、ブリッジ(橋)、橋義歯、架工義歯などと呼ばれています。

〇ブリッジ治療の流れ

・抜けてしまった部分の処置を行い、支えになる両側の歯を被せ物がしやすいように成形します
・その状態で型取りをし、技工所でブリッジを作成します
・完成したブリッジを歯にしっかりと接着して固定します

〇ブリッジのメリット

・人工歯の部分が両側の歯によって支えられるので安定感がある
・固定式のため入れ歯のように取り外しの必要がない
・保険内で比較的安く治療できる

〇ブリッジのデメリット

・人工歯を支える両側の歯も削って被せ物をする必要がある
・支えになる歯に負担がかかりやすい
・残っている歯や歯ぐきの状態が悪いと適応できない場合がある
・保険内ブリッジは前から4番目以降の歯は銀色の金属になる
・前から3番目までの歯には金属に白のプラスチックを張り付けたものが使用されるが変色しやすい

◆保険内義歯(入れ歯)

ブリッジでの治療が難しいとき、両側の歯を削るのが嫌なとき、抜けた歯の本数が多いときなどには、取り外し式の部分入れ歯での治療が選択肢になります。全部の歯が抜けた場合には、全部床義歯(総入れ歯)での修復です。保険内での部分入れ歯は、クラスプという金属製バネを残った歯に引っ掛けて取り付ける形態になります。

〇保険内義歯(入れ歯)の治療の流れ

・抜けてしまった歯の部分を処置した後に型を取ります。
・型を元に模型をつくり、バネなどの部品の配置を決めていきます。
・仮の入れ歯で調整をした後、再び型を取って本入れ歯を作成します
・完成した入れ歯を実際にはめてもらい、最終の調整を行います

〇保険内義歯(入れ歯)のメリット

・自分で取り外しができるのでお手入れがしやすい
・保険内のものなら比較的安い価格で治療できる

〇保険内義歯(入れ歯)のデメリット

・ブリッジに比べると安定性に欠ける
・適合させるのが難しい
・部分入れ歯の場合は金属のバネが目立つ
・バネをかけられている歯は常に引っ張られるような状態で負担がかかる
・使用を続けているとバネが変形し、作り直しをしなければいけない場合もある
・総入れ歯の場合は安定性が弱くなる

健康保険外の治療

健康保険外の治療(自費診療・自由診療)では、歯科医の判断で好きな材料や方式が選べるために選択の幅が広がり、見た目・機能性・適合性・安全性などの面でよりクオリティの高い治療が可能になります。ただ、保険外だから必ず優れているというわけではなく、保険内の治療以上に歯科医のセンスや方針によって大きな差が生まれやすくなります。価格も全体に高額となるため、健康保険外の治療を選択する際は十分に説明を聞き、メリット・デメリットを踏まえて慎重に検討することがすすめられます。

◆インプラント

抜けてしまった歯の健康保険外治療としての代表は、インプラントです。歯が抜けた後の顎骨に骨と結合する素材の人工歯根を埋め込み、その上に人工歯を固定する方法です。歯の根っこから建て直せるために機能や見た目が天然の歯にもっとも近く修復ができます。その代わり治療には手術がともない、治療が完了するまでの期間も長くなります。

〇インプラント治療の種類

・2回法
・1回法
・オールイン4(6)(取る)

など

インプラント治療の基本は、歯ぐきを切開して顎骨に人工歯根を埋めた後、一度歯ぐきを閉じ、人工歯根の定着と歯ぐきの回復を待ってから再切開し、上部の部品を取り付けて人工歯をつなげます。この方法は2回法と呼ばれ、手術回数や治療期間は増えますが安全性が高く、多くの症例に適応されます。

一方、1回目の手術の際に歯ぐきを閉じず、上部の部品が一体化した人工歯根を使ってそのまま骨への定着を待ち、1回の手術で済ませられる方法もあります。この方法は1回法と呼ばれ、手術の負担や治療期間を軽減させられますが、感染リスクの高い体質の人や顎骨が薄いタイプの人には適応しにくいデメリットがあります。前歯への使用もあまり向きません。

オールイン4(6)は、多くの歯を失った場合のインプラント治療法で、4~6本のインプラントを支えにして多くの人工歯を取り付けることができます。(取る)

〇インプラント治療の流れ

・歯が抜けた後の歯肉を切開し、顎骨にインプラントの人工歯根を埋め込みます
・1回法の場合はそのまま人工歯根と骨が結合するのを待ちます(約2~6ヶ月)
・2回法の場合は一回歯肉を縫って閉じ、安定した後に再切開をして上部の部品を取り付けます
・骨とインプラントがしっかり結合したら上部に人工歯を固定します。

〇骨の量や厚みが足りない場合は?

インプラント治療は顎骨に人工歯根をしっかり埋め込まないといけないため、骨の量や厚みが足りない場合にはすぐに手術ができないことがあります。その場合の治療法として、骨再生を促すGBR、骨を移植するボーングラフト、骨の幅を広げるスプリットクレスト、上部の空洞を利用したサイナスリフト・ソケットリフトなどがあります。

〇インプラントのメリット

・歯の根から建て直せるので安定性に優れ、噛む力もしっかりと復元できる
・他の歯で支える必要がない
・多くの場合人工歯はセラミックで天然の歯のように見せられ美しい

〇インプラントのデメリット

・手術が必要になる
・治療完了までの期間が長い
・体質や骨の状態によっては適応できないことがある
・全体に治療費が高額になる

◆保険外義歯(入れ歯)

保険外の治療を選択した場合、入れ歯での治療法もグッと幅が広がります。取り付けの形態、部品の素材、人工歯の種類などにも色々な選択肢が生まれるので、保険内のものよりは自分の希望に沿った快適なものが得られる可能性が高くなります。どのようなタイプのものを取り扱っているかは歯科医院によって様々で、価格の幅も非常に広くなっています。

〇保険外義歯(入れ歯)の例
・アタッチメントデンチャー

金属のバネがつかず、磁力や表面に見えない部品によって固定できる入れ歯です。表面に取り付け部品が見えないので入れ歯ということがわかりづらくなり、他の歯にかかる負担を軽減することもできます。

・ノンメタルクラスプデンチャー

バネを使わないだけでなく、取り付け部全体が樹脂でできている入れ歯です。歯ぐきへの当たりが優しく見た目にも美しく、金属アレルギーの人でも安心して使用することができます。ただ、噛む力や強度には劣り、経年使用で劣化しやすいので作り直しが必要な場合があります。

・テレスコープ義歯

残っている歯に被せ物をし、そこに入れ歯をはめ込むような形式の入れ歯です。安定性に優れ噛む力をしっかりと維持しやすく、夜眠るときにつけたままにできるメリットなどがあります。強度に優れ長年使い続けることも可能ですが、残っている歯にも被せ物をする必要があったり、製作が難しかったりする難点があります。